セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

膵臓-症例報告2

タイトル 消P-581:

皮膚病変を契機に発見された膵腺房細胞癌の1例

演者 壷井 智史(呉共済病院・消化器内科)
共同演者 野間 文次郎(呉共済病院・消化器内科), 畠山 剛(呉共済病院・消化器内科), 児玉 寛治(呉共済病院・消化器内科), 岡本 志朗(呉共済病院・消化器内科), 山口 修司(呉共済病院・消化器内科), 小南 賢吉郎(呉共済病院・皮膚科), 佐々木 なおみ(呉共済病院・病理診断科)
抄録 症例は50歳代、男性。受診1カ月前より腹痛・腹部膨満感が出現。その後右大腿部に発赤・硬結・熱感を伴う皮疹が出現し、全身へと広がった。その後も症状の改善がないため近医受診し、結節性紅斑が疑われたため当院皮膚紹介となった。結節性紅斑の原因として内臓疾患を除外するため当科紹介され、血液検査にて肝胆道系酵素と膵癌腫瘍マーカーの上昇を認めた。腹部超音波検査にて肝内に多発する高エコーSOLと脾臓に連続した腫瘤を認め、精査目的で腹部CT検査を施行した。CT検査では膵尾部から脾臓にかけて内部壊死を伴った10×8cm大の腫瘤、肝内にも最大7cmの多発腫瘤を認め、膵尾部癌の肝転移・脾浸潤と考えられた。確定診断のため肝腫瘤に対し経皮的生検を施行したところ、小型腺管の形成、あるいは充実性に増生する腫瘍細胞が認められ膵腺房細胞癌と診断した。皮疹については、血中リパーゼ・ホスホリパーゼA2の著明高値を認め、膵酵素の血中流入に伴う脂肪壊死が原因と考えられた。確定診断のため皮下結節に対し生検を行ったところ、皮下脂肪組織内に多数の好中球・組織球浸潤と壊死を認め、皮下結節性脂肪壊死症と診断した。診断後、膵癌に対してジェムザール・TS-1の併用投与を開始し、疼痛に対しては麻薬鎮痛剤の投与を開始した。しかし鎮痛効果は不十分であり、ステロイドやNSAIDs投与による炎症抑制が効果的であった。抗腫瘍効果についてはジェムザール・TS-1併用投与の効果を現在検討中である。膵腺房細胞癌は膵癌の1-2%を占めるとされており、このうち皮下結節性脂肪壊死症を伴うものは10%前後と報告されている。皮下結節性脂肪壊死症は膵癌や急性膵炎に合併する比較的希な疾患であるが、膵腺房細胞癌の合併が約35%に達するとの報告もあり、皮下結節の診断時に膵癌を念頭に置いた検索が必要と思われる。今回我々は、膵腺房細胞癌に皮下結節脂肪壊死を伴う貴重な症例を経験したので、文献的考察を加え報告する。
索引用語 膵癌, 皮下結節性脂肪壊死症