セッション情報 |
パネルディスカッション5(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)
消化器癌と酸化ストレス
|
タイトル |
消PD5-7:酸化ストレスに対する肝細胞癌の細胞死抵抗性の検討
|
演者 |
直江 秀昭(熊本大大学院・消化器内科学) |
共同演者 |
田中 基彦(熊本大大学院・消化器内科学), 佐々木 裕(熊本大大学院・消化器内科学) |
抄録 |
【目的】原発性肝細胞癌(以下、肝癌)は、根治治療後も異所性多中心性再発を繰り返し、治療抵抗性を示す予後不良な癌種である。治療抵抗性の分子基盤の中でも細胞死抵抗性の制御は治療成績の向上に直結する。そこで、細胞死刺激である酸化ストレスを用い細胞死抵抗性の責任分子群を明らかにした。【方法】ヒト肝癌細胞株を対象に細胞死誘導刺激前後のcell lysateを用い2D-DIGEにて、蛋白質発現ならびに燐酸化の変化を解析した。その後、質量分析にて燐酸化蛋白質を同定する一方で、遺伝子発現を網羅的に解析した。さらにpathway解析により細胞死抵抗性を担う候補責任分子群を絞り込んだ。一方、ヒト肝癌組織を対象に、細胞死抵抗性の候補責任分子の関与を検討した。【成績】燐酸化が有意に変化した蛋白質の大半は、細胞骨格関連蛋白質や分子シャペロンであった。また、刺激後早期に約10種類の細胞死関連遺伝子の発現が有意に亢進し、pathway解析から燐酸化が変化した蛋白質の一部が、細胞死関連遺伝子を誘導することが示された。細胞死抵抗性の異なる肝癌細胞株の比較検討から、責任分子としてnucleophosmin (NPM)に注目した。p-NPM(燐酸化NPM)と細胞死抵抗性に相関が認められ、siRNAにより細胞死抵抗性が減弱した。一方、NPMならびにp-NPMは、ヒト肝癌組織において非癌部より発現が有意に亢進し、またp-NPMの発現は、腫瘍径の大きい例、多結節例、単結節周囲増殖型/多結節癒合型で高い傾向にあった。さらにp-NPM高値例では再発までの期間が有意に短縮されており、NPM、とりわけp-NPMは肝癌の形質と密接な関連が示唆された。【結論】遺伝子発現解析に蛋白質翻訳後修飾解析を合わせた統合的解析から、肝癌の「細胞死抵抗性」の責任分子群が絞りこまれた。 |
索引用語 |
酸化ストレス, 細胞死抵抗性 |