共同演者 |
翁長 正明(都城市郡医師会病院 消化器内科), 仲道 展久(都城市郡医師会病院 消化器内科), 榮福 亮三(都城市郡医師会病院 外科), 岩砂 里美(都城市郡医師会病院 外科), 島 雅保(都城市郡医師会病院 外科), 太田 嘉一(都城市郡医師会病院 外科), 瀬口 浩司(都城市郡医師会病院 外科), 山下 兼一(都城市郡医師会病院 外科), 東 秀史(都城市郡医師会病院 外科), 前田 陽夫(都城市郡医師会病院 放射線科), 石井 章彦(都城市郡医師会病院 放射線科), 生嶋 一朗(都城市郡医師会病院 放射線科) |
抄録 |
【はじめに】近年内視鏡診断治療の進歩は著しいものがある.しかし一部の消化管出血では出血部同定や止血困難な症例も存在する.今回我々は当院における消化管出血例の緊急内視鏡の実態調査を行い止血困難例に対する経カテーテル的動脈塞栓術(TAE)について検討した.【対象】2005年1月~2006年7月までに吐下血を主訴として来院した196症例.うちTAEを施行したのは10症例(5.1%).【結果】緊急上部消化管内視鏡検査で出血源が確認できたのは174症例中150症例(86.2%)で胃潰瘍75例(43.1%),十二指腸潰瘍33例(19.0%),食道胃静脈瘤15例(8.6%),Mallory-Weiss8例(4.6%),胃癌5例(2.9%)などであった.下部消化管に関しては緊急内視鏡検査で出血部が同定できたのは22例中10例(45.5%)で,最も多かった大腸憩室出血8例については6例に内視鏡検査が施行され出血部が明らかであったのは1例のみであった.出血源の判明した上部消化管出血150例の治療については無処置ないしトロンビン散布が76例と約半数を占め,エタノール局注30例(20.0%),clip法22例(14.7%),EVL10例(6.7%)などの順であった.止血困難例は胃潰瘍3例,十二指腸潰瘍3例,結腸癌の胃直接浸潤1例の計7例(4.7%)あり全例にTAEが施行されていた.TAEにより全例止血されていたが十二指腸潰瘍1例が2ヵ月後に穿孔し手術となった.下部消化管出血10例については虚血性大腸炎3例と内痔1例は保存的加療,大腸憩室出血,内痔,EMR後出血,回腸潰瘍,直腸潰瘍の各1例がclip法,直腸癌1例にエタノール局注が行われ全例止血されていた.また大腸憩室出血全8例中3例にTAEが施行されており全例止血されていたが1例狭窄を認めた.【考案】上部消化管出血に対しては内視鏡観察及び止血術が有用であるが,下部消化管出血では内視鏡挿入及び観察が困難なことも多く血管造影の頻度が増すと考えられた.TAEはマイクロカテーテルシステムが進歩し超選択が高率に可能になった1990年以降は安全で高い治療効果を有することが明らかになったが、穿孔症例ではTAE術後潰瘍が難治傾向であったり、狭窄症例では腸管の虚血が全周性に及んだ可能性が示唆され、今後も検討が必要であると思われた。 |