セッション情報 一般演題

タイトル 71:

完全断酒により改善したアルコール性肝硬変に伴う肝肺症候群の1症例

演者 松本 修一(福岡徳洲会病院 総合内科)
共同演者
抄録 【症例】69歳、男性【主訴】吐血【現病歴】焼酎1日2合以上の飲酒家。3~4年前に肝硬変(詳細不明)を指摘されるも放置していた。また、20本X50年の喫煙歴である。今回、茶碗に1~2杯鮮血を吐血したため救急搬入となった。【身体所見】血圧90/66 mmHg、脈拍89 /分、酸素飽和度88%。意識清明でflapping tremorは認めず。前胸部に蜘蛛状血管腫あり。明らかな腹水貯留の所見なし。直腸診にてタール便を確認。【検査成績及び経過】緊急上部消化管内視鏡検査を行い、食道静脈瘤破裂の診断にて内視鏡的止血術を施行した。また、画像検査所見上肝硬変の所見であった。HBs抗原、HCV抗体ともに陰性であり、肝硬変の原因は長期間の飲酒歴があることからアルコール性肝硬変と診断した。肝予備能はChild-Pughスコア7点でGrade Bの状態であった。内視鏡的止血術後の肝機能の経過は良好であったが、入院時より低酸素血症を認め、改善は得られなかった。肺機能検査で肺活量と1秒量は正常範囲内であったが、一酸化炭素肺拡散能の著明な低下を認めた。また、明らかな心疾患は指摘されなかった。コントラスト心エコーで、右心系にbubbleを認めた6~7拍後に左心系にもbubbleを認めたため、肺毛細血管の拡張があると考え、肝肺症候群と診断した。在宅酸素療法を導入して退院後、断酒を継続することによって肝予備能はChild-Pughスコア5点へ改善し、低酸素血症も徐々に改善を認めた。2年の経過で在宅酸素療法から離脱でき、6年経過した現在も経過良好である。【考察】肝肺症候群は、肝硬変に伴い肺血管の拡張あるいは肺動静脈のシャントに伴い肺胞におけるガス交換が障害される。本症例では完全に断酒し、肝予備能が改善し、肝肺症候群も改善したと考えられた。
索引用語 肝肺症候群, アルコール性肝硬変