セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

膵臓-症例報告3

タイトル 消P-588:

膵仮性嚢胞内出血に対して血管塞栓術が有効であった2例

演者 小林 都仁夫(津島市民病院)
共同演者 前村 幸輔(津島市民病院), 蓮尾 由貴(津島市民病院), 荒川 大吾(津島市民病院), 久富 充郎(津島市民病院)
抄録 【症例1】57歳、男性。若い頃から大酒家である。平成18年頃から膵炎で他院に入退院を繰り返していた。平成23年12月心窩部痛にて救急搬送され、腹部単純CTを施行したところ膵鉤部に6×3cm大の仮性嚢胞を認めた。嚢胞内部にはわずかに高吸収域があり嚢胞内出血と考えられたが全身状態は安定しており保存的治療を行った。入院5日目に吐下血が出現し、腹部造影CTでは嚢胞の増大、嚢胞内および十二指腸内に高吸収域が拡がっており、出血性嚢胞の十二指腸穿破と考え同日血管塞栓術を施行した。後日上部消化管内視鏡にて十二指腸下行脚の穿破部位に仮性嚢胞の内面が露出している所見が確認できた。またCTでは仮性嚢胞は縮小しており、その後は出血徴候を認めなかった。【症例2】62歳、男性。アルコールは焼酎10L以上/月。平成20年からアルコール性肝硬変で通院していたが自己中断していた。平成22年8月初旬突然の腹痛があり、腹部造影CTで径3cm大の膵仮性嚢胞を認めたため入院となった。入院9日目に嚢胞は径8cm大に著明に増大し内部吸収値は高く仮性嚢胞内への出血が強く疑われた。さらに入院時13.1g/dlであったHbが6.8g/dlと低下しており、同日血管塞栓術を施行した。その後黒色便が出現したため上部消化管内視鏡を施行したところ、体下部小弯に壁外性の圧排像がありその中心から黒色血液の流出を認め、膵仮性嚢胞から胃への穿破と考えられた。さらに1週間後の腹部造影CTでは嚢胞は縮小傾向にあり嚢胞内出血の所見は認めなかった。またその後の内視鏡検査において瘻孔の自然閉鎖を確認した。【考察】膵仮性嚢胞は自然吸収が見られる一方で、嚢胞内出血は重篤な合併症のひとつであり、近年はinterventional radiologyの発達で塞栓術による出血のコントロールが可能となり良好な成績が得られている。今回我々は膵仮性嚢胞内出血に対して血管塞栓術が有効であった2例を経験した。いずれも消化管への穿破がみられ、仮性嚢胞の増大において注意すべき病態であると考えられ、若干の文献的考察を加え報告する。
索引用語 膵仮性嚢胞, 血管塞栓術