セッション情報 |
一般演題
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タイトル |
116:ステロイド精神病の治療に苦慮したプロテインS欠乏症合併自己免疫性肝炎の一例
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演者 |
中村 憲一(宮崎大学 医学部 内科学消化器血液学分野) |
共同演者 |
蓮池 悟(宮崎大学 医学部 内科学消化器血液学分野), 熊谷 公太郎(宮崎大学 医学部 内科学消化器血液学分野), 三池 忠(宮崎大学 医学部 内科学消化器血液学分野), 楠元 寿典(宮崎大学 医学部 内科学消化器血液学分野), 児玉 眞由美(宮崎大学 医学部 内科学消化器血液学分野), 永田 賢治(宮崎大学 医学部 内科学消化器血液学分野), 宇都 浩文(宮崎大学 医学部 内科学消化器血液学分野), 佐々木 文郷(宮崎医療センター病院), 堀 剛(宮崎医療センター病院), 林 克裕(宮崎大学 医学部 医学教育改革推進センター) |
抄録 |
【はじめに】ステロイド精神病は通常副腎皮質ステロイドが高用量のうちに出現し、減量によって改善傾向を示すことが多いとされている。今回我々は、ステロイド療法中に精神症状を発症し、その後アザチオプリンに変更するも精神症状が持続したプロテインS欠乏症合併自己免疫性肝炎の一例を経験したので報告する。【症例】52歳、女性。2005年9月に深部静脈血栓症を発症し、プロテインS欠乏症と診断された。下大静脈フィルター留置後、ワーファリンの内服加療を受けていた。2005年12月下旬に肝機能障害を指摘され、2006年2月16日に当科外来を受診した。AST 284, ALT 347, γ-GT 165, ANA 320倍, IgG 2300mg/dl, ウイルスマーカー陰性、AIHスコアリング14点であり、自己免疫性肝炎が疑われた。エコー所見、線維化マーカーからは肝硬変は否定的であった。 2月24日入院、3月1日には総ビリルビン2.6, AST 899, ALT 1087と上昇したため、プレドニゾロン(PSL)60mg /日の投与を開始した。その後ビリルビン値、transaminase, LDHは速やかに改善・正常化し、20mg/日まで減量した時点で4月24日に退院となった。退院直後より不眠の増強および健忘が出現し,また異常行動・幻覚が出現し内服、食事摂取不能となった。5月11日に当院精神科へ入院となった。出血・感染などの器質的異常は、症状・血液検査所見およびMRIなどの画像所見より否定的であった。ステロイドによる精神障害を考え、PSLをさらに減量したが改善せず、5月20日にPSLを中止しアザチオプリン100mgに変更した。その後一旦退院できるまでに改善したが、退院後再度精神症状が出現し、再入院となった。現在精神療法と抗精神薬の内服により症状は改善傾向である。脳血流シンチでは、発症初期には右前頭葉・頭頂葉・右視床など多発性の血流低下を認めていたが、改善した時期には血流の回復をみた。【結語】ステロイド精神病をきたしたプロテインS欠乏症合併自己免疫性肝炎の報告はなく、貴重な症例であると考えられ、またステロイド療法による重要な副作用のひとつとして再認識する必要があると考えられたため、多少の文献的考察を加え報告する。 |
索引用語 |
自己免疫性肝炎, ステロイド精神病 |