セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

膵臓-症例報告3

タイトル 消P-592:

下腿壊死性筋膜炎を起因に発見された膵体尾部脂肪置換の1例

演者 本郷 恵(東京労災病院・消化器内科DELIMITER済生会横浜市東部病院・内科)
共同演者 大場 信之(東京労災病院・消化器内科), 長澤 佳郎(東京労災病院・消化器内科), 藤田 充(東京労災病院・消化器内科), 佐藤 丈征(東京労災病院・消化器内科), 植木 紳夫(東京労災病院・消化器内科), 西中川 秀太(東京労災病院・消化器内科), 児島 辰也(東京労災病院・消化器内科)
抄録 患者は60歳男性。既往歴で17歳時に交通事故による内臓損傷がある。2011年1月自転車のスタンドで右下腿から足背にかけて打撲し、発赤と腫脹が続くため3日後に近医を受診した。しかしその後も改善がみられず、受傷6日後に当院皮膚科を紹介され、右下腿壊死性筋膜炎の診断で入院した。入院時に施行された血液尿検査所見で血糖値およびヘモグロビンA1c値の上昇が認められたため、糖尿病・内分泌内科へ紹介され精査が行われた。腹部超音波検査では、膵体部から尾部で輝度上昇がみられた。造影CTでは膵体尾部に一致する部位には低吸収域が広がっており、その中に微細な線状構造が貫通しており膵管と考えられた。腹部MRIにおいてもT1、T2強調像で高信号を呈し、脂肪に置換された膵実質と考えられた。膵管はERCPでは、頭部から体部の一部までしか造影されなかったが、MRCPで膵体尾部まで描出されている事より、膵体尾部欠損ではなく、膵体尾部脂肪置換と考えられた。さらに血管造影でも脾動脈から膵体尾部への栄養血管が認められた。一方蓄尿CRP(C-peptide immunoreactivity)とPFD(pancreatic functioning diagnostant)試験および便脂肪陽性から、膵β細胞と外分泌能の軽度低下が示唆された。以上の所見より膵外分泌能低下を伴う膵体尾部脂肪置換と診断した。膵体尾部脂肪置換は、後天的に膵体尾部の実質が広範に脂肪組織に置換される希な疾患で、機序としては、主膵管閉塞と膵循環障害が同時に起こることで脂肪化が生じると言われている。症状としては、膵外分泌能低下と消化吸収障害がある。本邦においては1975年以降51例が報告されているにすぎず、男女比は14:35で女性に多く、平均年齢は62.6歳であった。成因としては特発性が27例と半数を占め、次いで膵臓悪性腫瘍が14例であった。本症例の成因は不明であるが、交通事故による膵臓損傷の可能性があると考えられた。外傷性の膵体尾部脂肪置換は他に1例の報告があるのみで極めて希である。
索引用語 膵体尾部脂肪置換, 膵脂肪置換