抄録 |
【目的】消化器悪性腫瘍の中でも、肝胆膵癌は特に再発が多く、新たなバイオマーカーの探索は喫緊の課題である。我々は肝癌手術症例の多施設共同研究により、再発を規定するバイオマーカーを解析し、肝組織の酸化ストレス・パスウェイを同定したので報告する (Hepatology 2011; Gastroenterology, in press)。【方法】早期(BCLCステージ0-A)肝癌切除組織の癌部および非癌部組織を用いて、DNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現データによって、再発に相関するバイオマーカー候補を検索した。統計的解析によって同定した再発予測バイオマーカー候補に対して、多施設共同研究のティッシュマイクロアレイを用いた前向き解析による検証を行った。【成績】早期肝癌症例の癌部および非癌部の網羅的遺伝子発現データを用いて、癌部および非癌部それぞれから、独立に再発予測遺伝子セットを抽出した。さらに臨床病理学的因子を加え、変数選択による多変量解析の結果、非癌部遺伝子のみに有意な再発予測バイオマーカーが存在することを見出した(HR=0.447, 95%CI=0.249-0.808, p=0.010)。多施設症例用いた前向き研究の結果、非癌部バイオマーカー発現が再発と有意に相関することが証明された(HR=0.480. 95%CI, 0.256-0.902, p=0.038)。Gene set-enrichment analysisにより、非癌部バイオマーカーが肝組織の酸化ストレス・パスウェイと有意に相関することを見出した(p<0.001, FDR=0.042; P=0.006, FDR =0.035)。【結論】多施設共同研究の前向き解析によって肝癌再発のバイオマーカーを同定し、肝組織の酸化ストレス・パスウェイが発癌ポテンシャルを規定することを証明した。共同研究者:高山忠利(日本大・消化器外科)、山本雅一(東京女子医大・消化器外科)、國土典宏(東京大・肝胆膵外科)、川崎誠治(順天堂大・肝胆膵外科)、茂櫛薫、田中博(東京医科歯科大・情報医科学センター)。 |