セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

膵臓-症例報告4

タイトル 消P-593:

大腸癌術後経過中に出現し,多発性腫瘤病変を呈した自己免疫性膵炎の一例

演者 平松 慎介(大阪市立総合医療センター・消化器内科)
共同演者 根引 浩子(大阪市立総合医療センター・消化器内科), 丸山 紘嗣(大阪市立総合医療センター・消化器内科), 末包 剛久(大阪市立総合医療センター・消化器内科), 山崎 智朗(大阪市立総合医療センター・消化器内科), 佐野 弘治(大阪市立総合医療センター・消化器内科), 佐藤 博之(大阪市立総合医療センター・消化器内科), 中井 隆志(大阪市立総合医療センター・肝臓内科), 川崎 靖子(大阪市立総合医療センター・肝臓内科), 木岡 清英(大阪市立総合医療センター・肝臓内科), 清水 貞利(大阪市立総合医療センター・肝胆膵外科), 有本 裕一(大阪市立総合医療センター・肝胆膵外科), 塚本 忠司(大阪市立総合医療センター・肝胆膵外科), 福島 裕子(大阪市立総合医療センター・病理部), 井上 健(大阪市立総合医療センター・病理部)
抄録 症例は70歳代,男性.2008年6月にS状結腸癌と直腸癌に対して手術を施行し,病理結果はS状結腸癌がT3N1M0,StageIIIA,直腸癌がT2N0M0,StageIIであった.2010年4月のCTでは膵に腫瘤を認めなかったが,10月のCTで膵頭部と膵尾部にそれぞれ径3cm大の腫瘤を認めた.血液検査では腫瘍マーカーの上昇はなく,IgG4が267mg/dlと上昇を認めた.腹部エコーとEUSでは膵頭部と膵尾部に径3cm大の低エコー腫瘤を認め,ダイナミックCTとMRIでは腫瘤は造影効果を受けなかった.PET-CTでは腫瘤部位に一致して異常集積を認めた.ERCPでは主膵管に途絶・狭細像はなく,膵液細胞診では悪性所見はなかった.半年で急速に増大し多発していることから,大腸癌の膵転移,悪性リンパ腫(ML)などが考えられた.IgG4の上昇からは自己免疫性膵炎(AIP)が考えられたが,腫瘤が2個存在すること,腫瘤以外の部位に膵腫大がなく,PETの集積も腫瘤部のみであること,膵管狭細像がないことから否定的と判断した.膵頭部と膵尾部の腫瘤に対してEUS-FNAを行ったところ腫瘤は比較的柔らかく,病理検査ではリンパ球の集簇を認め,MLは否定できないが,上皮成分には悪性を疑う所見はなかった.確定診断には至らず,MLや転移性腫瘍を否定できないことから手術の方針となった.術中の膵尾部腫瘤からの迅速病理検査で悪性所見を認めず,膵尾部切除のみを行った.病理結果では,線維化および形質細胞やリンパ球の浸潤が目立ち,免疫組織学的にIgG4陽性形質細胞を多数認めAIPと診断した.膵頭部の腫瘤も同様の形態・性質を示すことからAIPと考えられた.多発性腫瘤病変を呈するAIPの報告例は少なく,貴重な症例と考えられるため,若干の文献的考察を加えて報告する.
索引用語 自己免疫性膵炎, 多発性腫瘤