共同演者 |
木村 利幸(兵庫県立尼崎病院・消化器内科), 菱谷 英里子(兵庫県立尼崎病院・消化器内科), 平松 由紀子(兵庫県立尼崎病院・消化器内科), 生田 耕三(兵庫県立尼崎病院・消化器内科), 出田 雅子(兵庫県立尼崎病院・消化器内科), 山内 雄揮(兵庫県立尼崎病院・消化器内科), 野本 大介(兵庫県立尼崎病院・消化器内科), 梅田 誠(兵庫県立尼崎病院・消化器内科), 川崎 公男(兵庫県立尼崎病院・消化器内科), 松村 毅(兵庫県立尼崎病院・消化器内科), 斉田 宏(兵庫県立尼崎病院・消化器内科) |
抄録 |
薬剤性ループスに自己免疫性膵炎を合併して発症した一例を経験した.【症例】79歳,男性【主訴】上腹部痛,発熱,全身倦怠感【既往歴】76歳:肺結核,79歳:関節炎【現病歴】当院呼吸器内科で2007年11月から2008年6月まで肺結核に対しイソニアジドを投与し内服加療をされた.その後経過観察中の2010年9月上旬より上腹部痛,発熱,全身倦怠感を自覚していた.同時期より血液検査で汎血球減少を指摘されていた.【現症】身長 157 cm, 体重 45.6 kg, 体温 37.2℃.左前頸部リンパ節の腫大あり.上腹部に圧痛あり.皮疹は認めず,光過敏やレイノー症状も認めず.【検査所見】血液検査:ESR 130 mm/h, WBC 2500 /μL, RBC 455万/μL, Hb 10.3 g/dl, Ht 33.8%, PLT 5.7万/μL, IgG 4130 mg/dl(IgG4 586 mg/dl),抗カルジオリピン抗体 19 U/m,抗核抗体 320倍.胸部X線検査:左胸水を認めた.腹部CT検査:膵尾部にソーセージ様のび慢性腫脹を認めた.内視鏡的逆行性膵管造影(ERP)で, 膵体尾部の膵管狭小化像を認めた.十二指腸乳頭より生検し, 十二指腸粘膜にリンパ球や形質細胞の浸潤(IgG4免疫染色で陽性)を認めた.以上より全身性エリテマトーデス(SLE)(抗結核薬イソニアジドによる薬剤性ループスの疑い)および自己免疫性膵炎と診断した.【経過】プレドニゾロン30mg/日の内服を開始した.内服開始2週間後に施行した腹部CT検査で膵腫大の軽減を認め,3週間後の血液検査で汎血球減少の改善傾向(WBC 6400 /μL, RBC 466万/μL, Hb 11.4 g/dl, Plt 11.1万/μL),ESRの改善(25mm/h), IgG4の低下(287 mg/dl)を認めた.その後もプレドニゾロンを漸減し加療を継続しているが, 症状の増悪を認めていない.【まとめ】演者らが1983年から2011年までの期間で医学中央雑誌にて検索したが,調べる限りSLEと自己免疫性膵炎を合併して発症した症例の報告はなく,貴重な症例と思われたので若干の文献的考察を加えて報告する. |