セッション情報 一般演題

タイトル 232:

膵嚢胞穿刺により救命し得た膵嚢胞門脈瘻の一症例

演者 蔵重 淳二(熊本大学 附属病院 消化器外科)
共同演者 近本 亮(熊本大学 附属病院 消化器外科), 八木 雄史(熊本大学 附属病院 消化器外科), 高森 啓史(熊本大学 附属病院 消化器外科), 金光 敬一郎(熊本大学 附属病院 消化器外科), 廣田 昌彦(熊本大学 附属病院 消化器外科), 馬場 秀夫(熊本大学 附属病院 消化器外科), 竹熊 与志(熊本赤十字病院 消化器科), 奥田 彩子(熊本赤十字病院 消化器科), 一二三 倫郎(熊本大学 附属病院 消化器外科)
抄録 症例は、57才男性、平成14年12月より仮性膵嚢胞、慢性膵炎にて経過観察中であった。平成18年4月腹痛、背部痛を認め前医を受診した。血中アミラーゼ値の上昇を認め、慢性膵炎の急性増悪と診断された。第9病日に施行したERCPで仮性膵嚢胞と上腸間膜静脈との交通を認め、加療目的にて第24病日に当科紹介入院となった。入院時のCTで膵頭部に20mmの嚢胞性病変を認めた。また、上腸間膜静脈-門脈-脾静脈内に広範囲に血栓を認め、門脈内には血流を認めなかった。肝への血流は、肝十二指腸間膜周囲の側副路を介して流入していた。第27病日に仮性膵嚢胞と主膵管との交通を遮断する目的で膵管ステントを留置した。第34病日に施行したCTでは、膵嚢胞の大きさに変化はなかったが、第39病日に39度を越える発熱、血圧低下を認め、血培養検査にてEnterococcus faecalisを認めた。CT、MRI上、仮性膵嚢胞は40mmに増大し、さらに同じ性状の嚢胞性病変が連続して、上腸間膜静脈から脾静脈、肝内門脈内へと広がっていた。膵管ステントにより膵嚢胞と主膵管の交通は遮断されたものの、嚢胞内圧の上昇が敗血症の原因と考え、膵管ステントを抜去した。しかし、抜去後も嚢胞の大きさに変化なく、敗血症の改善を認めないため経皮的に膵嚢胞穿刺ドレナージを施行したところ、約40mlの膿性排液を認めた。瘻孔造影を施行すると造影剤の門脈内への流出を認めた。穿刺後は解熱し、やや混濁した膵液を連日40ml程度認めた。排液が消失したところで瘻孔造影施行すると、造影剤の門脈内への流出は消失したので、ドレナージチューブを抜去した。穿刺後、2週間後のCT、MRIでは、門脈内の液体貯留は消失しており、膵嚢胞の著明な縮小を認めた。膵嚢胞と門脈間には隔壁が形成され瘻は閉鎖したと考えられた。しかし、門脈内血流の再開は認めなかった。仮性膵嚢胞の治療法として、切除、経皮的ドレナージ、腸管との吻合術などの方法があるが、今回は、仮性膵嚢胞の周囲に門脈側副路が発達していたため手術は施行せず、経皮的ドレナージにて直接嚢胞内貯留物の排出を行った。仮性膵嚢胞の門脈内穿破は非常に稀な病態と考えられるので報告する。
索引用語 膵嚢胞門脈瘻, 膵嚢胞穿刺