セッション情報 シンポジウム3

タイトル S1-02:

外科的切除をおこなった消化管原発悪性リンパ腫10例の検討

演者 長井 洋平(熊本大学大学院消化器外科学)
共同演者 石川 晋之(熊本大学大学院消化器外科学), 本田 志延(熊本大学大学院消化器外科学), 宮成 信友(熊本大学大学院消化器外科学), 馬場 秀夫(熊本大学大学院消化器外科学)
抄録 <背景・目的>近年、消化管原発の悪性リンパ腫(MALTomaを含む)に対する初回治療としてHP除菌療法・化学療法・放射線療法などの治療が選択されるようになり、なかでも胃に関しては特に高い奏功率が得られているが、内科的治療抵抗例、出血や通過障害をきたしている症例、確定診断が必要な症例などではやはり外科的切除が必要とされる。今回、外科的切除を必要とした消化管原発悪性リンパ腫症例10例の治療経過・予後をまとめ、手術適応や集学的治療の効果について検討する。<対象>1997年から2006年の間に当科にて手術をおこなわれた消化管悪性腫瘍のうち術前もしくは術後の病理組織診断にて悪性リンパ腫(MALTomaも含む)と診断された10例(胃6小腸2盲腸1直腸1)を対象とした。<結果>10例の平均年齢は58歳(28-82歳)で男:女=4:6であった。手術適応は内科的治療抵抗例が3例(胃2盲腸1)、出血・通過障害例が1例(胃)、穿孔性腹膜炎例が1例(小腸)、確定診断目的が2例(胃1小腸1)、根治目的が3例(胃2直腸1)であった。術後病理組織診断はDLBL(diffuse large B-cell lymphoma)が8例(胃5小腸2盲腸1)、MALTomaが2例(胃1直腸1)であった。DLBL8例中5例に術後化学療法(R-CHOP or CHO)がおこなわれた。胃原発の6例と直腸原発1例では現在のところ再発は認めていないが、小腸原発1例と盲腸原発1例では転移巣に対して化学療法(1例はPBSCTまで)を施行中である。<考察>当院では消化管原発悪性リンパ腫のうちDLBLの症例は初回治療としてR-CHOP6コースの化学療法を施行している。切除を先行した場合も同regimenで追加化学療法をおこなっているが、実際胃DLBLの1例では術後(幽門側胃切除+D2郭清)に増大した膵頭部背側のリンパ節が化学療法2コース終了時点で消失し以後CRが得られており、治癒切除と考えられても化学療法は全例おこなうべきと考えている。小腸・大腸原発の悪性リンパ腫症例は進行した状態で発見されやすく、原因不明の腹痛例や血液所見から悪性リンパ腫を疑う場合には造影CTや小腸透視、PETなどを用いた検査による早期発見が期待される。
索引用語 悪性リンパ腫, 手術療法