セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

膵臓-症例報告5

タイトル 消P-601:

膵Intraductal oncocytic papillary neoplasmの1例

演者 土居 幸司(福井赤十字病院・外科)
共同演者 吉田 誠(福井赤十字病院・外科), 川上 義行(福井赤十字病院・外科), 青竹 利治(福井赤十字病院・外科), 藤井 秀則(福井赤十字病院・外科), 広瀬 由紀(福井赤十字病院・外科)
抄録 膵Intraductal oncocytic papillary neoplasm(IOPN)は細胞質の好酸性顆粒を特徴とし,Intraductal papillary mucinous neoplasm(IPMN)の1亜型と考えられている稀な疾患である.今回我々はIOPNの1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は66歳男性,検診で貧血を指摘され,精査中,膵腫瘍が認められた.エコーでは膵体部に約4cm大の境界明瞭な低エコー腫瘤を認め,一部は嚢胞状であった.CTおよびMRIでは皮膜のある充実性腫瘍で,一部が壊死/液化しているように見え,尾側の主膵管拡張は認めなかった.腫瘍マーカー(CEA,CA19-9,DUPAN-2)は正常値であった. Neuroendocrine tumorまたはSolid-pseudopapillary tumor(SPT)が疑われ,リンパ節郭清を伴う膵体尾部脾切除を施行した.病理組織診断では腫瘍は多くが好酸性の多角形~類円形腫瘍細胞の充実性増殖からなり,膵管内では乳頭状構造が見られるが,粘液産生はほとんど見られなかった.大部分は圧排性増殖を示すが,多数の核分裂像を認め,膵後方組織に微小浸潤を認めた.特殊染色ではmitochondriaびまん性陽性,MIB-1強陽性であった.膵Intraductal oncocytic papillary carcinomaと診断された. リンパ節転移は認めなかった.IOPNは1996年にAdsayらによって提唱された膵管内乳頭腫瘍の概念で,組織学的に腫瘍細胞の細胞質がミトコンドリアにより好酸性顆粒状を呈する(oncocytic)ことが特徴である.IPMNの1亜型とされ,画像上は単房性あるいは多房性嚢胞を呈しIPMNに類似し,通常の画像診断では鑑別は困難であるが,FDG-PETが有用との報告もある.多くは臨床的に悪性所見を呈し,転移例も報告されていることから悪性に準じた治療が必要とされているが,稀な疾患であり,診断や治療方針の決定に関して,今後さらに症例の蓄積が必要である.
索引用語 IOPN, IPMN