セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

膵臓-症例報告5

タイトル 消P-602:

短期間に広範進展した分枝型IPMNの1例

演者 大西 佳文(国立静岡医療センター・消化器内科)
共同演者 船越 真木子(国立静岡医療センター・消化器内科), 後藤 芳宏(国立静岡医療センター・外科), 中島 慎治(国立静岡医療センター・外科), 佐藤 琢爾(国立静岡医療センター・外科), 宮原 利行(国立静岡医療センター・外科), 角 泰廣(国立静岡医療センター・外科), 松友 寛和(国立静岡医療センター・外科), 関戸 康友(国立静岡医療センター・病理)
抄録 (症例)71歳男性、主訴は心窩部痛。(経過)脳梗塞で通院中、2008年7月心窩部痛が出現し、アミラーゼ高値のため当科紹介された。腹部CT検査で、膵周囲の脂肪織濃度の上昇と、体部に25mm大の多房性嚢胞性病変を認めた。膵炎軽快後のERPでは、主膵管に不整、拡張はなく、嚢胞性病変は造影されなかった。膵液細胞診はclass IIIであった。MRCPでは、粘液貯留のある嚢胞性腫瘍で、分枝型IPMNと診断し経過観察した。6ヶ月後の2009年1月、CTでは、嚢胞の増大はなく、内部結節も明らかでなく、7月のCTでは、嚢胞を含め、著変ないため経過観察した。2010年4月、心窩部痛が持続するため受診し、腹部超音波検査で、び漫性膵腫大と、内部不均一低エコーから悪性を疑い、精査加療のため入院となった。CTでは、嚢胞の増大や、内部結節を認めなかったが、主膵管の軽度拡張、蛇行と、実質全体に多房性、小嚢胞を認めた。MRCPでは、膵全体に小嚢胞を多数認め、分枝膵管の嚢胞性拡張と診断したが、主膵管拡張が著明でないことから粘液閉塞による分枝膵管拡張は否定的であった。EUSでは、膵実質全体は内部不均一低エコーで、多数の小嚢胞部には、高エコー結節が充満しているものと考えられた。ERPの主膵管造影は不明瞭で、内部に粘液や腫瘍成分が疑われ、膵液細胞診はclass Vであった。以上から、体部分枝型IPMCが広範進展した膵全体癌と考え、5月中旬、膵全摘術を施行した。病理組織学的には、頭部から尾部の膵管内に、乳頭状の異型円柱上皮が広範に増殖していた。体部の拡張分枝膵管内には、粘液成分は少なく、一部に腫瘍壊死を認めた。 (考察)1) 1年間で膵全体に急速進展し浸潤癌になった。2) 膵管拡張は粘液によるものでなく、むしろ乳頭状腫瘍の発育進展によるものと考えられた。(結語) 体部分枝型IPMCが短期間に全体に広範表層進展、浸潤し、膵全摘したIPMCの1例を経験したので報告した。
索引用語 IPMN, 広範進展