抄録 |
(目的・背景)APE-1はROS刺激に対する塩基除去修復に働くDNA修復酵素として知られている。また、同時に炎症の場においてoxidative stressによっても誘導される多機能性蛋白質である。このAPE-1は最近、膵癌における5-FU製剤に対する化学療法の感受性を反映するものとしても報告されている。我々もまた、APE-1の発現をこれまでH. pylori感染胃癌スナネズミモデルやヒト胃癌組織における発現について報告してきた。一方でCOX-2は食道癌における予後増悪因子としても知られている。我々は、食道癌患者組織および食道癌cell-lineを用いて、APE-1の発現および発現様式を検討し、COX-2およびMCP-1発現との相関関係を検討し、興味深い関係を見出したので、ここに報告する。(方法)食道癌細胞(KYSE220)を用いMCP-1,IL-1β刺激下でのAPE-1発現をリアルタイムPCR法およびwestern blot法を用いて検討した。さらにAPE-1発現をMCP-1刺激下でNF-kBのinhibitorであるMG132を用いて蛋白レベルでの検討をした。またsiRNA(APE-1)を用いてAPE-1をknockdownした食道癌cell-lineにおけるCOX-2発現量をreal-time PCR法で確認した。さらに、CDDPを添加しAPE-1の発現の有無によるアポトーシスの程度を検討した。最後に食道癌患者65名を対象にAPE-1, COX-2, p65, MCP-1の免疫染色を行い、その局在および発現様式を検討した。(結果)KYSE220細胞においてはMCP-1,IL-1β刺激下でmRNAレベルおよび蛋白レベルでのAPE-1の発現量の増加を認めた。またMG132存在下ではAPE-1の発現は有意に減少した。APE-1をノックダウンさせたところmRNAレベルでCOX-2の発現は有意に抑制された。またCDDPによる癌細胞のアポトーシスも抑制された。食道癌組織においてAPE-1は核に、COX-2, MCP-1は細胞質に、p65は双方に発現を認めた。(結論)APE-1はMCP-1発現食道癌組織においてはCOX-2と有意な相関を認めており、COX-2とともに食道癌患者の予後増悪因子の一つと推定される。 |