セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓-基礎1

タイトル 消P-606:

低温ストレス誘導性蛋白CIRP(cold-inducible RNA binding protein)は癌細胞の移動能を亢進させる

演者 東辻 宏明(京都大大学院)
共同演者
抄録 (目的)RNA結合蛋白であるCIRPはストレス(mild cold shock(30℃)、UV照射、hypoxiaなど)でmRNAあるいはたんぱく質の発現が誘導され、ストレス抵抗性を細胞に賦与する。酸化ストレスに対抗して細胞老化抵抗性を誘導することにより、細胞不死化を誘導する。CIRPの発現は癌細胞にどのような影響を与えているのかを解析した。(方法)(1)肝癌細胞株についてCIRPのRNAレベル、蛋白レベルでの発現。(2)doxycyclinでhuman CIRP, human CIRP shRNAを誘導発現する細胞株(PLC,Huh-7)の作製。(3)in vitro cell scratch assay、matrigelの有無によるBoyden chamber assay。(4)ERM(ezrin/moesin/radixin)のリン酸化状態(リン酸化されるアミノ酸残基)、rac1 activityの測定。(5)ERMの上流で働くCIRP結合たんぱく質kinaseの同定、そのkinase complexの活性化状態の解析。(6)CIRPによる(5)のさらに上流に位置するkinase complexの活性化機序。(結果)1.肝癌細胞株でCIRPの発現は亢進していた。2.CIRPの発現が低いヒト癌細胞株はCIRPを発現すると細胞の移動性、浸潤性が亢進した。3.CIRPの発現の多いヒト癌細胞株でCIRPの発現を抑制すると、移動性、浸潤性ともに減少した。4.CIRPの過剰発現はERMのリン酸化、rac1活性を誘導した。5.CIRPの発現抑制はERMのリン酸化、rac1活性をsuppressした。6.CIRPの発現は ERM kinase complexを活性化した。7.6.のERM kinaseの上流のkinase complexをCIRPの発現はnuclear exportした。(結論)固形癌での低酸素状態や低栄養状態がCIRPを誘導してmetabolic sensorのkinase complexの活性化を介して細胞移動能亢進へと導いている。
索引用語 CIRP, 細胞移動能