セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓-基礎1

タイトル 消P-607:

質量顕微鏡法による肝細胞癌における脂質異常の解析

演者 森田 剛文(浜松医大・2外科)
共同演者 坂口 孝宣(浜松医大・2外科), 柴崎 泰(浜松医大・2外科), 鈴木 淳司(浜松医大・2外科), 福本 和彦(浜松医大・2外科), 稲葉 圭介(浜松医大・2外科), 鈴木 昌八(磐田市立総合病院・外科), 瀬藤 光利(浜松医大・分子解剖学), 今野 弘之(浜松医大・2外科)
抄録 【背景】近年、食生活の欧米化とともにメタボリックシンドロームが一般にも広く注目されており、脂質代謝と発癌に対する関心が高まっている。しかし、脂質の分子種まで含めた検討は、これまで余り研究が行われていない。【目的】組織内における脂質分布の画像化と物質の同定を可能にする質量顕微鏡法を用いて肝細胞癌の脂質解析を行い、脂質代謝異常と肝細胞癌の関連性を明らかにする。【実験1】肝細胞癌患者の組織標本を用いて、質量顕微鏡による解析を行った。【結果1】リン脂質の分布が癌部と非癌部で異なることが明らかとなった。特にPC(16:0/16:1)は癌部で多く、そこからsn-2位の脂肪酸が外れたリゾリン脂質LPC(16:0)は非癌部で多かった。【実験2】リン脂質リモデリング経路(Land’s cycle)の異常がリン脂質分布の原因との仮説の下、LPCに脂肪酸を付加するacyltransferase(LPCAT)の発現を調べた。【結果2】組織抽出RNAを用いたRT-PCR解析で、癌部のLPCAT1過剰発現が認められた。【実験3】LPCAT1の肝細胞癌に対する影響を調べるため、Huh7細胞でLPCAT1 siRNA導入した。【結果3】MTT assayを行ったところ、LPCAT1 siRNA群ではscramble siRNA群と比較してviabilityが65%減少した。Invasion assayではLPCAT1 siRNA群において浸潤能が70%抑制された。【考察】癌部と非癌部でリン脂質の分布が異なる原因として、LPCAT1の過剰発現が関係していると思われた。リン脂質2重膜の構成成分を制御するLPCAT1の発現を変化させることで、細胞増殖および浸潤が抑制された。
索引用語 肝細胞癌, 質量顕微鏡