セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓-基礎1

タイトル 消P-608:

スタチンによる肥満関連発癌の抑制

演者 安田 陽一(木沢記念病院・消化器科)
共同演者 清水 雅仁(岐阜大・1内科), 久保田 全哉(岐阜大・1内科), 丸田 明(木沢記念病院・消化器科), 中川 貴之(木沢記念病院・消化器科), 杉山 宏(木沢記念病院・消化器科), 田中 卓二((株)東海細胞研究所), 森脇 久隆(岐阜大・1内科)
抄録 【目的】肥満に関連した代謝・分子異常は、肝発癌に深く関与している。スタチン(HMG-CoA還元酵素抑制薬)は、脂質異常症治療薬であるとともに抗炎症および抗腫瘍効果を持つといわれ、以前我々は脂溶性スタチンであるPitavastatinが、Azoxymethane(AOM)によって誘発された大腸前癌病変を抑制することを報告した。今回、Pitavastatinが、Diethylnitrosamine(DEN)によって誘発される肝癌前癌病変を抑制するかどうか、メタボリック症候群モデルマウスであるdb/dbマウスを用いて検討した。【方法】5週齡のdb/dbマウスに、DEN(40 ppm)を2週間経口投与して肝前癌病変を誘発させた。DEN処置終了後より、Pitavastatin(1または10 ppm)含有食を投与し、同剤が肝癌前癌病変(Foci of cellular alteration: FCA)の発生を抑制するか検討した。また血清や、肝臓から抽出した蛋白、mRNAを用い、肥満関連分子異常に関する各種解析を行った。【成績】Pitavastatin投与群においてFCAの発生数と同病変における細胞増殖活性に有意な減少を認めた。血清では、Pitavastatinの投与によって、AST、ALT、遊離脂肪酸、総コレステロール、TNF-αは低下するとともに、アディポネクチンは上昇していた。また肝内トリグリセリド量を低下させ、肝脂肪化組織像を改善した。さらに、肝臓におけるリン酸化型(活性型)AMPK-α蛋白、Bad蛋白の発現を増加させるとともに、Bcl-2TNF-αおよびIL-6 mRNAの発現を低下させた。【結論】Pitavastatinは、脂質代謝異常、アディポサイトカインの不均衡および肝脂肪化を改善し、アポトーシスを誘発し、炎症性サイトカインの発現を抑制することで、肥満・肝脂肪化に関連したマウスの肝発癌を抑制した。Pitavastatinを含むスタチンは、肥満患者における大腸発癌、肝発癌の化学防御薬である可能性がある。
索引用語 スタチン, FCA