セッション情報 パネルディスカッション5(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

消化器癌と酸化ストレス

タイトル 消PD5-10:

H. pylori感染によるROSを介したアポトーシス制御機構の解析

演者 平田 喜裕(東京大・消化器内科)
共同演者 早河 翼(東京大・消化器内科), 小池 和彦(東京大・消化器内科)
抄録 【背景】Helicobacter pylori (H. pylori)は胃炎、潰瘍性疾患、胃癌の原因になる細菌であり、炎症性シグナルの活性、アポトーシス反応、細胞増殖反応などを胃粘膜にひきおこしていると考えられている。我々はASK1が胃癌で増加し、細胞増殖を促進していることを報告したが、ASK1はROSによるアポトーシスの制御分子としても知られている。本研究ではH. pyloriが産生するROSが胃粘膜のアポトーシスに与える影響とその作用機序についてMAP3Kの働きを中心に検討した。【方法】胃癌細胞株に野生型とcagPAIのノックアウト(KO)H. pyloriを感染させ、ROSの発生を検討し、ROSの阻害薬を用いてその影響を観察した。アポトーシスは、FACSおよびimmunoblotで、活性化される細胞内シグナルはimmunoblotで検討した。【成績】AGS細胞、MKN45細胞に野生型H. pyloriを感染させるとROSが発生したが、cagPAIのKOでは産生が減弱していた。H. pyloriは感染細胞のアポトーシスを誘導したが、NACによるROSの阻害によりアポトーシスは減少した。野生型H. pyloriはASK1蛋白のリン酸化を誘導したが、NACにより阻害された。ASK1のノックダウン細胞の検討では、H. pylori感染による後期相のJNKの活性化が減弱し、アポトーシスも減少していた。P38阻害薬は、アポトーシスを増強し、一方でJNK阻害薬はアポトーシスを減弱した。TAK1のノックダウン細胞ではH. pyloriによるp38の活性化が抑制され、アポトーシスは亢進していた。P38阻害薬の投与およびTAK1のノックダウンによりROSの産生が亢進しており、これがアポトーシスに関与していると考えられた。【結論】H. pyloriはcagPAI依存性にROS-ASK1-JNKシグナルを介して上皮細胞のアポトーシスを誘導する。一方TAK1を介したp38の活性化がアポトーシスを抑制していた。H. pylori感染胃粘膜の細胞死にはROSの発生が極めて重要であり、TAK1とASK1活性化のバランスが粘膜病変に関与していることが示唆される。
索引用語 Helicobacter, 活性酸素