セッション情報 パネルディスカッション5(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

消化器癌と酸化ストレス

タイトル 消PD5-11:

H. pyloriのCagA依存的発癌プロセスに対する宿主細胞内ROS亢進の役割

演者 津川 仁(慶應義塾大・消化器内科)
共同演者 鈴木 秀和(慶應義塾大・消化器内科), 日比 紀文(慶應義塾大・消化器内科)
抄録 【目的】H. pylori感染細胞はautophagyが発現し、4型分泌装置を介して装填されたoncoprotein CagAはautophagolysosomeに取り込まれ分解を受ける。従って、H. pylori感染宿主でのautophagy発現異常は細胞内CagA安定性亢進に繋がり、CagA依存的発癌リスクを亢進させると推測される。本研究では、CagA分解性autophagy発現機序を解析し、CagA分解性autophagyの発現異常をもたらす宿主異常を検討した。【方法】AGS細胞、KATO3細胞に対するin vitro H. pylori感染系を用いた。Autophagy発現はLC3の変換、LysoTracker染色にて評価した。細胞内ROSはCM-H2DCFDAを用いて共焦点顕微鏡解析とFACS解析にて評価した。【結果及び考察】CagA分解性autophagy発現時、H. pylori感染AGS細胞ではROS亢進が認められ、Akt及びMDM2のリン酸化が有意に亢進し、p53分解が誘導された。p53をノックダウンするとCagA分解性autophagyが亢進したが、p53強制発現細胞では抑制された。N-acetyl cysteineは、リン酸化Aktの発現及びp53分解誘導を抑制し、autophagy発現を抑制した。p53のR273Hはautophagy発現を抑制し、細胞内CagA安定性を亢進させた。【総括】(1) H. pylori感染細胞のROS亢進はAktの活性化を介してp53分解を促進させ、CagA分解性autophagyを起動させる。(2) p53変異はautophagy発現を抑制し、細胞内CagAを安定化し、発癌リスクを亢進させる。
索引用語 autophagy, 酸化ストレス