セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓-B型肝炎

タイトル 消P-623:

高齢者B型肝炎では,遺伝子型Aでなくともキャリア化しうる

演者 小畑 達郎(宇治徳洲会病院・消化器内科)
共同演者 竹本 隆博(宇治徳洲会病院・消化器内科), 竹田 彬一(宇治徳洲会病院・消化器内科)
抄録 【緒言】本邦固有のHBVは遺伝子型BjとCeであり,成人での感染は一般に一過性感染で収束する.しかし外来性の遺伝子型Aでの急性B型肝炎では,5~10%が持続感染するため,問題視されている.我々は,遺伝子型A以外でありながら慢性化した高齢者のB型肝炎を2例経験しているので報告する.【症例1】85歳,女性.2006年末より食思不振出現.2007年1月10日,近医受診し黄疸を指摘されて当院受診.画像上肝内外胆管拡張なく,肝内胆汁鬱滞と診断.意識状態は肝性脳症0-1度でPT=60%,AST/ALT=1540/814(IU/L),T-Bil./D-Bil.=16.1/10.8(mg/dL)なる肝機能障害があり,HBs抗原陽性で,IgM HBc抗体陰性であったためB型慢性肝炎急性増悪と診断した.直ちに入院の上,IFNα+ETV併用療法を開始し,2週間後にETV単独治療に移行した.経過は順調で1ヵ月後にHBe抗原/抗体の,2ヵ月後にHBs抗原/抗体のseroconversion(SC)が成立した.2007年11月以降,核酸アナログも投与中止したが,2009年5月までHBs抗体陽性かつ肝機能正常を確認していた(その後は認知症のため高齢者介護施設に入所してフォロー不能となった).本症例は当院入院2年前に他院で白内障の手術を受けており,その時点ではHBs抗原/抗体は両者陰性だった.また,本症例のHBV遺伝子型はCだった.【症例2】66歳男性。頻繁に中国に出張しており、現地の女性とrisky sexual contactsがあった。2007年2月より体中の関節が痛んだ。3月27日、近医で採血したところ、AST/ALT=267/376なる肝障害を認め、HBs抗原陽性だった.3月28日当院を紹介され受診し,翌日入院となった。遺伝子型BaのB型急性肝炎と診断。6ヶ月以上経過を見たが自然軽快せず、2007年10月,組織学的にも慢性肝炎に至ったため(F2/A2),ETVを投与開始.2008年5月にHBs抗原/抗体のSCを得て,2008年6月以降drug freeで経過観察中である.【考案】遺伝子型C,Baで慢性化し,抗HBV療法でHBs抗原陰性化した2例を報告した.高齢者では成人初感染でも持続感染化しうるため注意が必要である.
索引用語 高齢者HBV感染, 慢性化