セッション情報 パネルディスカッション5(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

消化器癌と酸化ストレス

タイトル 消PD5-13:

がんは動く-ミトコンドリア由来活性酸素消去によるがん細胞浸潤の制御-

演者 松井 裕史(筑波大・消化器内科)
共同演者 田村 磨聖(筑波大・消化器内科), 金子 剛(筑波大・消化器内科)
抄録 【背景・目的】、膜蛋白NADPH Oxidase由来活性酸素(ROS)はがん浸潤を促進するとされてきた。一方、ミトコンドリア由来ROS(mitROS)はがん増殖を促進するとされているが、浸潤についての検討はない。今回我々はmitROSの消去ががん浸潤能を抑制するか検討した。【方法】ラット胃粘膜培養細胞株RGM1、そのがん様変異細胞株RGK1、RGK1細胞にミトコンドリア特異的活性酸素消去酵素MnSODを遺伝子導入した細胞(RGK1 MnSOD)を用いた。それぞれの細胞が産生する活性酸素量を電子スピン共鳴(ESR)および活性酸素指示薬AFPを用いて測定した。細胞運動評価として、ラッフリング量、細胞遊走能、細胞浸潤能を評価した。ラッフリング量は、経時的に撮影した細胞画像の細胞膜周囲で増減するラッフリング膜の面積を測定することで評価した。細胞遊走能評価として行ったWound healing assayでは、細胞上の傷害領域が塞がる速さが早いほど細胞遊走能が高いものと判断した。浸潤能評価では、細胞間基質モデルとしてマトリゲルを用い、細胞がゲル内に浸潤した距離を経時的に測定した。さらにMnSOD誘導作用持つ薬剤としてRebamipideを前投与し、各項目に与える影響について検討した。【結果】細胞由来活性酸素を測定した結果、RGM-1<RGK-1 MnSOD<RGK-1の順であった。MnSOD導入によりRGK-1の活性酸素が減少したことから、がん様変異によって増加したRGK-1から検出される活性酸素はミトコンドリア由来O2-であることが示唆された。また、全ての細胞運動評価の結果は細胞由来活性酸素量測定結果と相関しており、RGM-1<RGK-1 MnSOD<RGK-1の順で運動能力・浸潤能力が高かった。これらの結果から、ミトコンドリア由来活性酸素はがん浸潤に関わることが示唆された。Rebamipide前投与はMnSODをがん細胞に誘導し、その浸潤を有意に抑制した。【結語】がん浸潤抑制にミトコンドリア由来活性酸素消去は有用であり、今後MnSOD誘導型薬剤の開発が望まれる。
索引用語 がん浸潤, 活性酸素