セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓-NASH/NAFLD1

タイトル 消P-651:

本態性高血圧における肝病変成立および進展における酸化ストレスの関わり~自然発症ラット(SHR)を用いた脂肪性肝炎モデルによる基礎的検討~

演者 山本 理哉(広島大病院・総合内科・総合診療科)
共同演者 菅野 啓司(広島大病院・総合内科・総合診療科), 田妻 進(広島大病院・総合内科・総合診療科)
抄録 【目的】高血圧症と非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)とは相互に独立した関連因子であることが報告されているものの、その詳細な機序は不明である。本態性高血圧がNASHの成立と進展に与える影響とそのメカニズムについて、高血圧自然発症ラット(SHR)を用いて検証した。【方法】 8週齢SHRおよび正常血圧コントロールWKYラットに対し、コリン欠乏(CD)食を5週または20週間投与し、肝脂肪化や線維化の進展、脂質過酸化、抗酸化酵素、線維化マーカーおよび脂質代謝関連遺伝子の発現を比較検討した。【成績】5週間のCD食負荷により、WKYとは対照的にSHRでのみに著明な肝脂肪化を認め、PPARα, ACOX, MTP, APOBの遺伝子発現が有意に低下していた。さらに肝SOD活性、抗酸化酵素遺伝子(Mn-SOD, catalase, GPX, GST)の発現もCD食SHRにおいてのみ著明に低下していた。これらの抗酸化酵素の低下を反映し、肝TBARSおよび血清ALTはSHRでのみ有意に上昇を認めた。20週のCD食負荷の検討では、SHRにおいて高度の肝線維化を認め、硬変肝の状態を反映して肝TGはWKYより低下していた(SHR-CD; 10.71 vs. WKY-CD; 18.77mg/100mg tissue)。線維化マーカーであるTGF-β1, CTGF, vimentinの遺伝子発現もSHRではWKYに比較して145, 277, 160%と有意に増加しており、組織学的変化を支持する結果であった。血清ALTは20週投与においてもSHRで有意に高値を維持していた。【結論】SHRはWKYに比較して顕著な脂肪肝(5週CD食)と肝線維化(20週CD食)を呈し、高血圧症の存在がNASHにおけるfirst hit:肝脂肪化とsecond hit:酸化ストレスによる肝細胞障害の両者に影響を与え、NASH進展の増悪因子になることが実験的に示唆された。
索引用語 非アルコール性脂肪性肝疾患, メタボリック症候群