セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓-腫瘍1

タイトル 消P-660:

破裂肝細胞癌に対する治療戦略―急性期と安定期における治療選択と予後因子

演者 利國 信行(倉敷中央病院・消化器内科)
共同演者 後藤 知之(倉敷中央病院・消化器内科), 詫間 義隆(倉敷中央病院・消化器内科), 高畠 弘行(倉敷中央病院・消化器内科), 守本 洋一(倉敷中央病院・消化器内科), 下村 宏之(倉敷中央病院・消化器内科), 山本 博(倉敷中央病院・消化器内科)
抄録 【目的】肝細胞癌(HCC)破裂はstage 4かつ緊急病態である。治療には急性期と安定期の2局面における戦略が必要である。治療選択と予後について検討した。【方法】対象は1994年1月から2009年6月に治療した破裂HCC患者156例(平均67歳、男113例、女43例)。急性期と安定期の治療実態および予後因子を調べた。【結果】(1)急性期:肝動脈塞栓術(TAE) 48例、肝動注化学療法(TAI) 1例、エタノール注入療法1例、切除2例、保存的治療104例。1か月生存率44.2%(69例)。TAE例は止血率91.7%(44例)、1か月生存率68.8%(33例)。短期(1か月)予後良好因子はCr 1.2 mg/dl以下(odds ratio (OR) 0.24, P = 0.0002)、止血治療施行(OR 0.32, P = 0.006)。TAEと保存的治療の152例ではPT 65%以上(OR 0.42, P = 0.024)、Cr 1.2 mg/dl以下(OR 0.17, P < 0.0001)、TAE施行(OR 0.26, P = 0.001)であった。(2)安定期:1か月以上生存した69例に対する初回の安定期治療は肝動脈化学塞栓療法(TACE) 5例、TAI 3例、切除8例(以上全てTAE例から)、保存的治療53例。生存期間中央値は積極的治療1068日、保存的治療69日(P < 0.0001)。腹膜播種は3例あり1例切除。長期予後良好因子は肝外転移なし(hazard ratio(HR)0.58, P = 0.027)、T.Bil 1.6 mg/dl以下(HR 0.50, P = 0.0001)、AFP 2753 ng/ml以下(HR, 0.66, P = 0.004)、安定期治療施行(HR 0.34, P < 0.0001)。急性期にTAE を施行した33例での検討はHCC片葉分布(HR 0.52, P = 0.042)、AFP 230 ng/ml以下(HR 0.51, P = 0.008)であった。【結語】HCC破裂の急性期にはTAEを中心とする止血治療が短期予後を改善する。また肝腎機能が短期予後因子である。安定期は肝機能に加え腫瘍因子が予後因子となり、それに応じた積極的治療が長期予後を改善する。
索引用語 破裂肝細胞癌, 肝動脈塞栓術