セッション情報 パネルディスカッション5(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

消化器癌と酸化ストレス

タイトル 消PD5-15:

酸化ストレスにおける選択的スプライシング制御異常と消化器がん発症機構の解明

演者 増田 清士(徳島大大学院ヘルスバイオサイエンス研究部・ストレス制御医学)
共同演者 西田 憲生(徳島大大学院ヘルスバイオサイエンス研究部・ストレス制御医学), 六反 一仁(徳島大大学院ヘルスバイオサイエンス研究部・ストレス制御医学)
抄録 【目的】RNA結合蛋白質HuRは、遺伝子の転写後調節を行う重要な因子の一つであり、細胞増殖、アポトーシス、ストレス応答などを広範囲に制御している。また、大腸がんなどのがん組織で高発現しており、発がんや遠隔転移・薬剤耐性の誘導に関与していることが示唆されている。これまでのHuRの研究は細胞質内での機能が中心であったが、HuRの核内での働きが注目されつつあり、RNAプロセシングを介した細胞機能の調節が示唆されている。本研究では、HuRが酸化ストレスによって誘導されるTransformer 2 beta (Tra2β)の選択的スプライシングを制御し、大腸がん細胞に異常増殖能を誘導することを見いだした。【方法】【成績】ヒト大腸がん細胞株HCT116細胞にアルセナイト処理を行うと、Tra2β遺伝子からエクソン2を含むTra2β4 mRNAバリアントが無処理群の約5倍誘導されたが、HuRをノックダウンした細胞では全く誘導されなかった。Tra2β遺伝子のエクソン1-4の領域(12 Kbp)を含むミニジーンを用いた検討で、HuRノックダウン細胞は、コントロール細胞で確認されたTra2β4 mRNA特異的な選択的スプライシングが誘導されなかった。ビオチンプルダウン法と変異型HuR発現プラスミドを用いた検討から、HuRは酸化ストレスによって特定のアミノ酸基がリン酸化され、Tra2βのexon2と特異的に結合することで、Tra2β4 mRNAの発現を制御していた。また、Tra2β4 mRNAは蛋白質をコードしない新規non-coding RNAであり、過剰発現によってがん細胞に異常増殖能を誘導することを見いだした。【結論】以上のことから、HuRが選択的スプライシング調節因子として機能し、新規non-coding RNA分子を生成して発がんを引き起こす可能性が示唆され、現在さらに解析を進めている。
索引用語 選択的スプライシング, HuR