セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓-腫瘍1

タイトル 消P-665:

C型慢性肝炎からの肝発癌及び治療後再発に対する予測因子としてのSNPの検討

演者 友田 健(岡山大大学院・消化器・肝臓内科学)
共同演者 能祖 一裕(岡山大大学院・分子肝臓病学), 山本 和秀(岡山大大学院・消化器・肝臓内科学)
抄録 【背景、目的】C型慢性肝炎患者からの肝細胞癌(HCC)への進展には著しい個人差が認められており、その原因の1つとしてsingle nucleotide polymorphism(SNP)を含めた遺伝的背景が関与していると考えられる。そこで今回我々は肝発癌に関連があると予想される候補遺伝子のSNPと肝発癌との関連について解析を試みた。【方法】2004年~2009年の間に当院に入院したC型肝炎の患者468人を対象とした。肝癌を発症した265人と発症していない203人の患者において、肝発癌への関与が予想される81の候補遺伝子についてMALDI-TOF MS iPLEXassayを用いてSNP解析を行った。さらに患者背景を含めたロジスティック回帰分析を行った。また、関与が示唆されたSNPについて各患者でrisk genotypeのOddsRatio(OR)を掛け合わせたmultipliedOR(MOR)を算出し累積的関連を検討した。さらに3cm、3個未満のHCCに対し初回治療としてRFAを行った111人のHCC患者を対象に、RFA治療後の再発率とSNPとの関連について検討した。累積再発率の算出にはKaplan-Meier 法を使用した。【結果】SNP解析にて、これまで肝発癌に関連があることが報告されているMDM2(OR=2.0)、ALDH2(OR=1.6)に加え、CCND2(OR=2.0), RAD23B(OR=1.8), CEP164(OR=3.5), GRP78(OR=1.8)の関与が示唆された。MORを基準とし、5つのrisk groupに分類して検討すると、超高リスク群では超低リスク群に比べて、発癌に対するオッズ比が19となった(p=1.08×10-5)。これをIHIT studyの発癌率と合わせて検討すると、10年後の推定発癌率はF0/1かつSNPs超低リスク群の1.7%からF4かつ超高リスク群の96%まで細分化された。治療後再発における検討では(観察期間中央値は1043日)高リスク群は低リスク群に比べて優位にHCCの再発率が高かった(p=0.038)。【結語】SNPsによる発癌リスクの差は一般に小さいが、SNPsのリスクを組み合わせる事により、リスクの差をより明確にすることが可能となり、遺伝子背景測定の臨床的有用性が高まると考えられた。
索引用語 HCC, SNP