抄録 |
【目的】抗がん剤による肝動注化学療法は正常肝への毒性により、大きく治療制限を受ける。窒素含有Bisphosphonate はRAS蛋白の活性化の阻害を通じて各種の悪性細胞の分化増殖を抑制すると考えられ、その毒性も少ない。このBisphosphonate と同様な作用が期待されるMenatetrenoneを併用した転移性肝がんへの動注塞栓療法をおこなったので、その治療成績を検討する。【方法】転移性肝癌に対してPamidronate Menatetrenone Mixture (PMM)の動注塞栓療法を行い、評価可能となった139症例の臨床効果に検討を加えた。肝動脈よりPamidronate 30-60mg、Menatetrenone 50-150mgを投与しGelatin sponge細片 1-2gにて軽く塞栓し、PMMの腫瘍に対する作用時間の延長を図った。経過観察のCT Arteriographyにおいて腫瘍のVascularityの消失をもって壊死巣と診断し、RECIST基準に準じて効果判定を行った。【成績】男性68例(平均62.6歳)、女性71例(平均58.1歳)の肝転移症例に対して2-23回(平均6回)のPMM肝動脈塞栓療法を行った。治療成績はCR 5例(4%)、PR 61例(44%)、SD 36例(25%)、PD 37例(26%)であった。塞栓術後の全例に発熱が認められたが一過性であり、肝機能変動も軽微であった。肝病巣に胃動脈の関与が認められたときにも、胃動脈から胃および十二指腸を含めた領域に投与したが吐下血は認めなかった。【結論】PMMによる動注塞栓療法の治療効果は細胞分裂抑止効果以上の殺細胞効果が得られ、術後の発熱反応等により免疫細胞の関与が示唆された。PMMは正常細胞特に抗原提示細胞を傷害しないため免疫細胞に癌特異抗原を認識させることができ、腫瘍特異抗原を認識した細胞障害性リンパ球(CTL)を増やすと考えられた。PMMはRAS蛋白を抑制する分子標的治療とも考えられ、免疫を活性化させる治療法として応用が広いものと思われる。かなり強力な局所治療効果が期待できる一方、正常肝への影響が軽微であるため、かなり進行した転移性肝癌にも適応が可能となり、末期がんの治療の一翼を担えるものと考える。 |