セッション情報 パネルディスカッション6(消化吸収学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会合同)

消化吸収の側面からみた炎症性腸疾患の病態と栄養療法

タイトル 消PD6-2:

炎症性腸疾患患者におけるビタミンKと骨粗鬆症の関係

演者 氏原 正樹(名古屋大大学院・消化器内科学)
共同演者 安藤 貴文(名古屋大大学院・消化器内科学), 後藤 秀実(名古屋大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】炎症性腸疾患(IBD)患者では骨粗鬆症の罹患率の上昇が報告され、その一因として低栄養や脂溶性ビタミンの吸収不良が挙げられる。またクローン病(CD)患者では終末回腸の切除や病変により脂溶性ビタミンの欠乏をきたしやすいことが指摘されている。今回我々はIBD患者における栄養摂取状況とビタミンの血中濃度やucOC値などを測定し骨密度との関係について比較検討を行った。【対象と方法】対象は当院通院中の骨粗鬆症治療薬やサプリメントを服用していないIBD患者15名(寛解期潰瘍性大腸炎患者5名:UC群、臨床的寛解状態(CDAI<150)のCD患者で回腸切除歴のない5名:非切除群、回腸切除歴のある5名:切除群)。検討時点において各群1名ずつステロイドを使用していた。骨密度の測定は二重エネルギーX線吸収(DXA)法で行い、栄養摂取については普段の食事のアンケート調査を3日間行い解析した。【成績】腰椎、大腿骨の骨塩量やZ-scoreは切除群において最も低値であった。総エネルギー摂取量はUC群1764.8±274.8kcal、非切除群1791.4±536.7kcal、切除群2168.2±438.2kcalであり、一方脂肪エネルギー比率はUC群21.9%、非切除群18.8%、切除群8.4%と切除群において有意に低かった(p<0.01)。ビタミンK摂取量はUC群152.4±32.3μg、非切除群107.2±52.8μg、切除群89.6±13.1μgであり、PK値はUC群0.31±0.21ng/ml、非切除群0.29±0.17ng/ml、切除群0.13±0.93ng/mlと有意差は認めないものの切除群で低い傾向があった。PK値と脂肪エネルギー比率には相関が認められた(p<0.05)。ucOC値はUC群5.1±4.3ng/ml、非切除群7.7±3.4ng/ml、切除群10.7±8.2ng/mlで非切除群、切除群で徐々に高くなる傾向があった。ビタミンDの摂取量や25OH-D値には3群間で明らかな差は認めなかった。【結論】回腸切除後の症例における寛解期での栄養療法中には、ucOC値の測定を定期的に行い、上昇している症例に対してビタミンKの補充を考慮し、脂肪の質や量を考慮した栄養指導を心掛ける必要があると考えられた。
索引用語 炎症性腸疾患, 栄養