抄録 |
【背景と目的】炎症性腸疾患 (IBD)のバイオマーカー探索は臨床上の大きな課題となっている。我々は「アミノインデックス技術」を用いて、血漿アミノ酸濃度プロファイル(アミノグラム)を解析することでIBDの診断、疾患活動性に有用なバイオマーカーの確立を試みた。【症例と方法】387名のIBD患者(クローン病(CD), n=165; 潰瘍性大腸炎 (UC), n=222、および210名の健常人(HC)の空腹時血漿アミノグラムをLC-MSにより測定した。「アミノインデックス技術」を用いてCD, UCとHCを判別する多変量指標式および、活動期(CDaまたはUCa)と寛解期(CDrまたはUCr)を判別する多変量指標式を導出しそのパフォーマンスを評価した。【結果】健常人とIBD患者では空腹時血漿アミノグラムは大きく異なり、活動期IBD患者ではヒスチジンやトリプトファン濃度がより低値であった。特にヒスチジン濃度は疾患活動性指数であるCrohn’s disease activity index(CDAI)やLichtiger clinical activity index(CAI)、CDにおいては血清CRPと逆相関を示した。「アミノインデックス技術」で導出された指標式はHCとCDおよびUCを高い精度で判別可能であり(CD vs HC, ROC AUCs =0.940 (95%CI: 0.898-0.983); UC vs HC, 0.894 (95%CI: 0.853-0.935))、さらにCDとUCのそれぞれにおいて臨床的活動期と寛解期の患者を判別する指標式の導出も可能であった(CDavsCDr, 0.894 (95%CI: 0.853-0.935); UCavsUCr, 0.849 (95%CI: 0.770-0.928))。臨床的活動性を判別する指標式はCDAI(rs=0.592, 95%CI: 0.385-0.742, p<0.001) やCAI (rs=0.598, 95%CI: 0.452-0.713, p<0.001)と高い相関性が確認された。【考察】健常人とIBD患者では血漿アミノグラムは異なっており、「アミノインデックス技術」で導出された指標式はIBDの診断と疾患活動性の評価に有用であり、非侵襲的で簡便なモニタリングツールになりうる可能性が示唆された。 |