セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓-腫瘍9

タイトル 消P-713:

肝臓外科の立場から見た肝細胞癌再発に対する分子標的薬ソラフェニブの位置づけ

演者 高本 健史(日赤医療センター・肝胆膵外科)
共同演者 橋本 拓哉(日赤医療センター・肝胆膵外科), 尾形 哲(日赤医療センター・肝胆膵外科), 井上 和人(日赤医療センター・肝胆膵外科), 丸山 嘉一(日赤医療センター・肝胆膵外科), 宮崎 晃行(日赤医療センター・肝胆膵外科), 幕内 雅敏(日赤医療センター・肝胆膵外科)
抄録 【背景】分子標的薬ソラフェニブは、切除不能肝細胞癌への新しい治療法として登場し、高い腫瘍抑制効果をもたらしたとの報告が散見されている。しかし少ないエビデンスや効果への期待のため、ソラフェニブによる治療の位置づけは、すでに確立された肝細胞癌の治療体系の中で、曖昧となっている。今回我々は、肝切除後再発に対して、ソラフェニブによる治療を含めた積極的外科治療アルゴリズムを立て、治療を行った。そして、その適応頻度と忍容性、効果について調査した。【方法】対象は、2009年10月から2011年3月まで当センターにおいて、肝細胞癌に対する根治的切除後に再発を指摘された患者。以下の積極的外科治療アルゴリズムを用いて治療を選択した。すなわち、(1)再発部位にかかわらず切除可能ならば切除、(2)切除不能な場合→肝内限局であればTAE、肝外病変ならばソラフェニブ投与。【結果】対象は、77例。アルゴリズムによって選択実行された治療は、外科治療42例(55%)(再肝切除38+肺切除3+肋骨切除1)、肝動脈塞栓術31例(40%)、ソラフェニブ投与4例(5%)、であった。ソラフェニブ投与4例において、肝切除から投与開始までの間隔は、263日、190日、184日、74日。投与期間は、294日、198日、336日、209日であり、うち2例が投薬中止。ChildBへの移行をみた1例、肺転移による呼吸障害増悪の1例で、残りの2例は投与継続中。有害事象は、皮膚症状(grade1が3例、grade2が1例)、grade2の下痢が2例であり、肝不全などの重篤なものはなかった。効果は、PR2例、PD2例であった。【結語】肝切除後再発の患者において、ソラフェニブの忍容性が確認でき、比較的長期の投与が可能であった。しかし、外科治療を軸とする治療を行った場合、ソラフェニブが適用となる症例は、限定的であった。ソラフェニブを肝細胞癌再発の治療にさらに活用するためには、術後補助や他の治療との併用などに関するさらなるエビデンスの積み重ねが必要である。
索引用語 肝細胞癌, 分子標的薬