セッション情報 一般演題

タイトル 213:

肝細胞癌として切除後、病理学的に血管筋脂肪腫が明らかとなった一例

演者 酒井 健司(九州大学第一内科)
共同演者 下田 慎治(九州大学第一内科), 黒田 陽介(九州大学第二病理学), 山下 洋市(九州大学第二外科)
抄録 症例は36歳男。検診で偶然受けた腹部エコーで肝S2/3に15×12mmの低エコーを呈する腫瘍を指摘され精査加療目的で当科入院となった。生活歴として機会飲酒で常備薬などはなかった。配偶者がHBVキャリアであったがHBs抗原陰性、HBs抗体陽性、HBc抗体陽性とHBVの既感染パターンであった。HCV抗体が陽性であったがRNA定性で陰性とHCVについても既感染パターンであった。採血データで血小板29万、アルブミン4.4g/dl、総ビリルビン0.7 mg/dl,AST 19 U/L,ALT 12 U/L 、PT 95%と肝機能は良好であり、AFP,PIVKA-IIといった腫瘍マーカーは陰性であった。画像所見では血管造影で肝外側区に径2cm大の多血性腫瘍を認めた。血管造影時にCTHA/CTAPが施行され肝左葉外側区の腫瘍は肝細胞がんに矛盾しない所見であった。肝臓SPIO-MRIでの所見として問題の結節にSPIOの取り込みはなく、これも肝細胞がんに合致する所見であった。HBVの関与があること、および画像上肝細胞癌に矛盾しない所見であったことから、生検は播種の可能性なども考慮して施行しなかった。最終的に腫瘍を含む肝外側区域切除を行った。肝は外観上正常所見を呈しており、腫瘍は境界不明瞭で灰白色であった。術後の病理免疫染色で血管筋脂肪腫の診断がついた。血管筋脂肪腫は病理学的には血管、平滑筋、脂肪成分が種々の割合で混在する腫瘍で腎に好発し肝には比較的まれな多血性の非上皮性良性腫瘍である。本症例は示唆的な症例と考えられたので若干の文献的考察を加え報告する。
索引用語 血管筋脂肪腫, 肝細胞癌