セッション情報 一般演題

タイトル 239:

腸回転異常に伴うメッケル憩室内に発生した腺癌の1例ー術前診断、治療に関してー

演者 山口 慎也(長崎掖済会病院 外科)
共同演者 草野 裕幸(長崎掖済会病院 外科), 吾妻 康次(長崎掖済会病院 外科), 川口 昭男(井上病院)
抄録 成人腸回転異常に伴うメッケル憩室はたまに臨床の場で遭遇する疾患であるが、今回われわれは、まれなメッケル憩室内の癌を経験したので報告する。患者は74歳男性。腹痛で発症し発熱を伴っていた。腹部造影CTにて骨盤内の小腸に二重に造影される構造物があり大腸、膀胱と癒着していた。小腸造影ではカニの爪様であり、術前、炎症に伴う腫瘤による腸閉塞の診断にて手術を施行した。腹腔内は小腸主体に広範囲に癒着しており、トライツ靭帯より110cm、回腸末端より180cmの小腸が嚢胞状に17cmにわたり突出、先端が腫大し炎症性癒着が強かった。また腸回転異常を合併していた。メッケル憩室炎の診断にて憩室切除、虫垂切除とした。摘出標本の病理検査にて、十二指腸のVater乳頭部の粘膜に類似した形態を示す粘膜を背景に発生した高分化型の腺癌であった。しかし腫瘍部の分泌型ムチン免疫染色にてMUC2(-)MUC5AC(+)MUC6(+)であり十二指腸、胆管上皮、胃粘膜上皮いずれでもありえる結果であった。以上よりメッケル憩室内に発生した腺癌の診断となった。その後の治療は抗癌剤(TS-1)内服とし、1年以上経過したがCEAの上昇はあるものの、画像上明らかな再発、転移は認められてない。本邦においてメッケル憩室に発生した腫瘍の報告は自験例を入れて44例、うち悪性腫瘍は38例の報告がある。また術前より診断しえたものはわずか3例であった。術前診断、治療、経過についての報告は少なく明らかな治療方針はない。今回われわれは憩室切除、抗癌剤内服治療をしたが文献的考察を加えて報告する。
索引用語 メッケル憩室, 腺癌