セッション情報 一般演題

タイトル 242:

消化管出血を繰り返し治療抵抗性であった結節性多発動脈炎(PN)の1剖検例

演者 采田 憲昭(済生会熊本病院 消化器病センタ-)
共同演者 工藤 康一(済生会熊本病院 消化器病センタ-), 吉田 健一(済生会熊本病院 消化器病センタ-), 上原 正義(済生会熊本病院 消化器病センタ-), 江口 洋之(済生会熊本病院 消化器病センタ-), 今村 治男(済生会熊本病院 消化器病センタ-), 藤本 貴久(済生会熊本病院 消化器病センタ-), 多田 修治(済生会熊本病院 消化器病センタ-), 須古 博信(済生会熊本病院 消化器病センタ-), 林 尚子(済生会熊本病院 外科センタ-), 志垣 信行(済生会熊本病院 外科センタ-), 神尾 多喜浩(済生会熊本病院 病理)
抄録  症例は68歳、女性。腎障害の既往歴がある。平成17年9月4日より特に誘因なく下肢の紫斑と上腹部痛が出現し、症状が増悪するため9月6日近医に入院。上部消化管内視鏡検査と腹部造影CTで十二指腸から上部空腸の高度の浮腫とびらん、潰瘍を認めたため高度の感染性腸炎と診断され、絶食・中心静脈栄養(IVH)・抗生剤(PIPC→IPM→CZOP)にて加療されるものの症状は軽快せず、9月25日より嘔吐と大量下血を認めたため9月28日当科緊急入院。Schonlein-Henoch 紫斑病などの血管炎症候群や動静脈奇形を疑ったが、断続的に下血が持続し、消化管出血シンチにて十二指腸と上部空腸に出血源を特定したため、9月30日小腸部分切除術と小腸の人工肛門造設を施行するとともに皮膚生検を施行した。切除小腸の肉眼的所見では出血性びらんと小潰瘍が多発し、血管炎症候群などに起因する腸炎を疑ったため、術直後よりステロイドパルス療法を開始した。しかし、10月5日より再度新鮮血下血がみられ、以後断続的に1500-2500ml/日の下血を認めた。内視鏡的止血術や経動脈的血管塞栓術(TAE)を試みるも奏功せず、多臓器不全を併発し10月21日に永眠された。家人の承諾が得られ病理解剖を施行した。組織学的に上部空腸の中等度大の筋性動脈にフィブリノイド壊死を伴った血管炎が散見された。腎では半月体形成糸球体腎炎を一部認めたが、明らかな血管炎はなかった。生前のTAEでの仮性動脈瘤の存在、皮膚生検の組織所見、小腸部分切除標本と剖検標本から結節性多発動脈炎(PN)と診断した。結節性多発動脈炎は全身の小・中等度の筋性動脈を侵す壊死性血管炎であり、消化管病変を認めることもあるが、消化管出血が主体となった症例はまれである。自験例は、当初下肢の紫斑と上腹部痛が出現しSchonlein-Henoch 紫斑病と酷似していたが、病状の進行状況から、より中枢性の血管炎症候群を疑い病理診断および血管造影検査でPNと診断された1剖検例であった。文献的考察を加えて報告する。
索引用語 結節性多発動脈炎(剖検例)), 消化管出血