セッション情報 ワークショップ2

タイトル W2-02:

十二指腸乳頭部腫瘍の診断と治療 -当院における内視鏡的乳頭部切除術についての検討-

演者 山尾 拓史(長崎市立市民病院 内科)
共同演者 山川 正規(長崎市立市民病院 内科), 入江 準二(長崎市立市民病院 病理), 水田 陽平(長崎大学 第二内科), 河野 茂(長崎大学 第二内科)
抄録 内視鏡的乳頭部切除術(Endoscopic papillectomy:以下EP)は外科的治療に比べ低侵襲で有用な治療法であり近年報告も増加している。内視鏡的乳頭部切除が他の消化管腫瘍の内視鏡的切除術と異なる点は膵液、胆汁の流出部でありOddi筋に囲まれるなど特異な解剖学的位置関係にあることが考えられる。現状では不完全切除例への対応や合併症についての課題は残るものの、術前の十分な進展度診断が可能であれば乳頭部腺腫、早期癌に対する安全な内視鏡治療法として評価できると考える。【適応】術前診断で腺種または早期癌で各種画像診断(HDG,EUS,ERCP,IDUS)にて胆膵管内に腫瘍進展を認めず、乳頭部に限局しているもの。【対象と方法】2001年1月から2007年2月までにEPを施行した30例。内訳は男女比17:13、平均年67齢歳(34-89歳)、腫瘍の切除方法は高周波スネアを使用し切開電流による一括切除を基本とした(2例は2分割)。また追加処置として膵炎、胆管炎予防のため膵管および胆管ステントを留置した。【結果】術前診断は腺腫24例、腺腫内癌1例、高分化型腺癌3例、炎症性ポリープ2例であった。完全切除は22/30例(73.3%)不完全切除は8/30例(26.7%)であった。断端判定不能で不完全切除となった8例のうち6例は再検にて遺残を認めなかった。合併症予防のために膵管ステント29/30例(96.7%)、胆管ステント23/30例(76.7%)に挿入した。早期合併症として急性膵炎を2例(6.6%)、出血2例(6.6%)、閉塞性黄疸2例(6.6%)認めたがいずれも保存的治療にてすみやかに改善した。穿孔は認めなかった。【結論】膵管、胆管ステントの挿入は術後膵炎、胆管炎の予防に有用であった。術前の正確な進展度診断により筋層を越えず膵管、胆管に進展のない十二指腸乳頭部に限局した十二指腸乳頭部腺腫および早期癌に対する治療および完全生検を目的とした内視鏡的乳頭部切除術は低侵襲で安全な手技である思われた。早期癌症例への対応に関しては今後もさらに症例をかさねた上での検討が必要であると思われる。
索引用語 十二指腸乳頭部腫瘍, 内視鏡的乳頭部切除術