セッション情報 一般演題

タイトル 128:

内視鏡的に経時的変化を観察しえた胃悪性リンパ腫の1例

演者 古賀 有希(国家公務員共済組合連合会 新小倉病院 内科)
共同演者 武市 昌郎(国家公務員共済組合連合会 新小倉病院 内科), 吉澤 直之(国家公務員共済組合連合会 新小倉病院 内科), 松原 不二夫(国家公務員共済組合連合会 新小倉病院 内科), 野村 秀幸(国家公務員共済組合連合会 新小倉病院 内科), 中村 和彦(国家公務員共済組合連合会 新小倉病院 外科), 前田 省吾(前田病院)
抄録 今回我々は内視鏡的に胃悪性リンパ腫の時間的変化を観察しえた症例を経験したので報告する。症例は70代女性。平成18年6月より上腹部の不快感が出現。同年7月に前田病院にて上部消化管内視鏡検査を施行、胃病変を指摘され精査目的にて当院紹介となった。
内視鏡的に病変は2カ所観察された。1つの病変は胃前庭部前壁のやや大きい潰瘍病変であり、形態はやや不整だが潰瘍底は均一で潰瘍辺縁に悪性腫瘍を疑わせる所見は無かった。3回にわたる内視鏡下生検では悪性腫瘍は認めず、PPI投与約7週後に潰瘍は瘢痕化したため、同病変を良性の消化性潰瘍と判断した。
2つ目の病変は胃前庭部大弯に認められ、境界は不明瞭でわずかに隆起した病変であった。隆起部は正常粘膜で覆われ、ごく軽度の発赤、小びらんを伴っていた。この時、病変として認識できず内視鏡下生検は行わなかった。初回検査より2週後の内視鏡検査では、同病変は丈の低い粘膜下腫瘍と認識された。隆起表面の胃小区模様は、みだれ発赤が目立つようになり、小びらんを伴っていた。この時の生検病理組織では悪性腫瘍は認めなかった。初回検査より7週後の内視鏡検査では、病変は境界明瞭な類円形の隆起となっており、隆起は増し内部に不整な潰瘍を伴っていた。この時、採取された潰瘍辺縁の生検病理組織にてDiffuse large B-cell lymphomaと診断され、病期分類はLugano分類stageII1の胃悪性リンパ腫であった。初回検査より10週後、治療直前の内視鏡検査では、潰瘍周囲の粘膜下腫瘍隆起が明らかに緊満感をもって増大し、ごつごつ感が増していた。治療は化学療法としR-THP-COPを3コース行ない、その結果病変は消失し瘢痕化した。その後放射線療法30Gyの追加治療を行い、現在治療終了まもないが経過は良好である。
本症例はDiffuse large B-cell lymphomaの胃悪性リンパ腫が、わずかな粘膜変化より生じ、粘膜下腫瘍を経て中央に潰瘍を形成し、その後潰瘍周囲の粘膜下隆起が増大していく発育過程を内視鏡的に観察できた興味深い症例と思われる。
索引用語 胃悪性リンパ腫, 形態変化