セッション情報 一般演題

タイトル 158:

低蛋白血症,体重減少を来たした糞線虫症の一例

演者 矢野 貴文(慈愛会今村病院分院 消化器内科)
共同演者 福留 聖(慈愛会今村病院分院 消化器内科), 上田 博一郎(慈愛会今村病院分院 消化器内科), 高崎 能久(慈愛会今村病院分院 消化器内科)
抄録 今回,成人T細胞性白血病(以下ATL)に合併した糞線虫の一例を経験したので報告する.症例は69歳男性.2007年8月より軟便,食思不振が出現.約10Kgの体重減少も伴うようになり10月下旬に精査加療目的で当科に入院となる.採血で異型リンパ球を伴う白血球増多,低蛋白血症,可溶性IL-2受容体抗体の増加,抗HTLV-I抗体陽性がみられた.糞便検査では便中に多数の糞線虫を認め,糞線虫症と診断された.上部消化管内視鏡検査では十二指腸に酒粕様粘膜を認め病理組織学的にも糞線虫の寄生が確認された.下部消化管内視鏡検査では回腸終末部に不整型粘膜と縦走傾向を有する潰瘍瘢痕,盲腸から下行結腸までアフタ様ビランを認めた.病理組織学的にATLウイルスの浸潤が見られATLの下部消化管病変と診断された.糞線虫に対して計2回イベルメクチンを投与.軟便の回数も徐々に減少し,糞便中の糞線虫も確認されず当科退院となった.現在ATLについては血液内科で経過観察中である.糞線虫は熱帯・亜熱帯地域に広く分布し,わが国では沖縄・奄美地方が浸淫地である.沖縄県と鹿児島県の南西諸島はATLウイルスと糞線虫との重複感染が高率に認められ,糞線虫腸性者の約40%は抗HTLV-1抗体陽性者で,有意に高い結果となっている.播種性糞線虫症など重症の糞線虫症は敗血症や髄膜炎などを合併し,約半数に抗HTLV-1抗体を認めるとの報告もある.本症例のように,同一時期に糞線虫症とATLの消化管病変を合併した症例の報告は少なく報告した.
索引用語 糞線虫症, 成人T細胞性白血病