セッション情報 |
一般演題
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タイトル |
125:スキルス胃癌と鑑別が困難であった胃MALTリンパ腫の一例
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演者 |
吉澤 直之(新小倉病院 内科) |
共同演者 |
古賀 有希(新小倉病院 内科), 武市 昌郎(新小倉病院 内科), 松原 不二夫(新小倉病院 内科), 野村 秀幸(新小倉病院 内科), 堤 宣翁(新小倉病院外科) |
抄録 |
症例は40歳代女性。H17年5月下旬頃より、心窩部痛が出現するようになり6月28日近医受診。上部消化管内視鏡検査にて胃病変を指摘され、精査目的にて当院紹介となった。上部消化管内視鏡検査では、体上中部の大弯から後壁にかけ広範な陥凹性病変を認めた。陥凹内の粘膜は不整で一部に潰瘍、びらんを形成し、色調は発赤と褪色が混在していた。この病変と非連続性に体中部前壁と体下部大弯にそれぞれΙΙc様陥凹性病変を認め、陥凹内に再生上皮と思われる発赤粘膜を認めた。X線検査では、立位充影像にて体上部から体下部大弯の変形像を認めた。二重造影像では体上部大弯から後壁にかけ広い陥凹性病変を認め、側面像で強い壁の伸展不良を認めた。さらに体中部前壁と体下部大弯に周囲に透亮像を伴う不整な陥凹性病変を認め、陥凹内に結節状の透亮像を認めた。以上の所見よりスキルス胃癌と判断したが、生検病理組織の結果は胃MALTリンパ腫であった。stagingは腹部CT検査で胃小弯側のリンパ節腫脹を認め、Lugano分類でStageII1と診断した。治療はH.pylori陽性であり、まず除菌療法を選択。除菌3ヶ月後の内視鏡像では、体上中部の陥凹は残存するも、陥凹内の粘膜は均一となり潰瘍は著明に縮小し、色調はほぼ褪色調を呈するのみとなった。また体中部前壁、体下部大弯の病変は周囲隆起が消失し、陥凹は浅く平坦化し、色調は褪色調へと変化した。しかし体上部後壁の潰瘍部の生検病理組織にて腫瘍細胞の残存を認め、追加治療として放射線治療を施行。除菌14ヶ月後、放射線治療9ヶ月後の内視鏡像では、病変部全てが褪色調の色調変化を呈すのみとなり、生検病理組織においても腫瘍細胞は認めなかった。腹部CTの胃小弯側リンパ節腫脹も消失し、現在も再発は認めていない。低悪性度胃MALTリンパ腫のH.pylori除菌療法による治癒率は70~80%とされている。StageI,ΙΙ1期でも除菌療法にて、不変増悪の場合は放射線治療や経口単剤化学療法などの2次治療が必要とされている。今回我々は胃癌と鑑別が困難で、またH.pylori除菌療法、放射線治療にて寛解を維持している胃MALTリンパ腫を経験したので文献的考察と共に報告する。 |
索引用語 |
胃MALTリンパ腫, スキルス胃癌 |