セッション情報 シンポジウム3

タイトル 研-33:

破裂により発見された肝細胞癌5例の検討

演者 野元 麻子(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 放射線科)
共同演者 松浦 隆志(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 放射線科), 鎌野 宏礼(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 放射線科), 田中 厚生(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 放射線科), 添田 博康(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 放射線科), 舛本 博史(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 放射線科), 上野 新子(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 肝臓科), 具嶋 敏文(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 肝臓科), 高橋 和弘(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 肝臓科)
抄録 【はじめに】 肝細胞癌破裂は、肝細胞癌全体の10%前後で見られ、肝細胞癌の死因としても10%前後を占めると言われている。近年、肝細胞癌に対しては種々の診断法・治療法が発達し、早期発見し治療を継続していくことで、予後もある程度期待できるようになってきた。しかし未だに、破裂して初めて肝細胞癌と診断される例も少なくない。今回我々は、破裂により発見された肝細胞癌5例について、その背景、予後を比較検討したので報告する。
【対象と検討】 2004年4月から2007年2月までに当院で破裂により肝細胞癌と初めて診断された症例は5例であった。内訳は男性4名、女性1名、年齢は33歳から80歳(平均60歳)であった。これらについて、肝炎ウィルス感染の有無、腫瘍の大きさ、飲酒歴、予後などを検討した。
【結果】 HBs抗原陽性が2例、HCV抗体陽性が1例、HBs抗原、HCV抗体いずれも陰性が2例であった。HBs抗原、HCV抗体陰性例のうち1例はHBc抗体低力価陽性であった。1例で中等度の飲酒歴を認め、他の4例には飲酒歴はなかった。全例非肝硬変症例であった。腫瘍の大きさは、径4cm大から右葉を占拠する巨大なものまで様々であった。単発が3例、多発が2例であった。4例は緊急TAEが施行され、1例は待機的TAEが行われた。予後については、5例中3例がその後半年以上生存していた。TAE後、手術を施行した症例が1例、TAEを繰り返した例が1例、リザーバー動注化学療法を施行した例が1例、無治療が2例であった。
【考察】 日本における肝細胞癌患者の約80%はHCV抗体陽性患者から発生すると言われている。しかし、破裂により発見される例ではHCV抗体陰性群のほうが多く、特にHBs抗体陽性の非肝硬変例が多かった。HBs抗原陽性患者においてもきめ細かい経過観察が必要であると考えられた。また、TAEの施行により全例1次救命が可能であったことより、迅速な診断と治療が必要であると考えられる。今回の結果に若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 肝細胞癌, 破裂