セッション情報 一般演題

タイトル 168:

抗凝固療法患者における直腸扁平腫瘍のESD後出血に対して、注腸透視用直腸カテーテルを用いた圧迫止血が奏功した一例

演者 吉村 大輔(済生会福岡総合病院 内科)
共同演者 麻生 暁(済生会福岡総合病院 内科), 井星 陽一郎(済生会福岡総合病院 内科), 落合 利彰(済生会福岡総合病院 内科), 明石 哲郎(済生会福岡総合病院 内科), 右田 良克(済生会福岡総合病院 内科), 福冨 崇能(済生会福岡総合病院 内科), 徳松 誠(済生会福岡総合病院 内科), 壁村 哲平(済生会福岡総合病院 内科), 中村 和彦(九州大学大学院 病態制御内科)
抄録 【症例】62歳男性、閉塞性肥大型心筋症に対する心筋部分切除術後および弁膜症を伴う徐脈性心房細動に対する永久心臓ペースメーカー植え込み後のためワルファリンによる抗凝固療法中であった。C型肝硬変症を合併し,前医において痔核切除術を受けた際に多量の術後出血が持続した既往を有す。痔核術後の経過観察の大腸内視鏡検査において直腸腫瘍を指摘され,加療のため当科を紹介頂いた.
【治療】病変は直腸Rb右前壁の3cm大の退色調顆粒集簇様扁平隆起性腫瘍で,内視鏡的切除の適応と診断した.治療日の1週前よりワルファリンを中止しヘパリン持続点滴によりAPTT 70秒程度に維持したが,投与中血小板数が5万/μl台に減少した.ヘパリン投与中止5時間後よりESDを施行し病変を一括切除した.術中に大きな出血を認めなかったが,治療当日深夜より新鮮血下血がみられ,緊急内視鏡検査で潰瘍底からの拍動性出血に対してクリッピングにより止血した.心房細動による血栓塞栓症のリスクを鑑みワルファリン,ヘパリンとも治療翌日より再開したが,治療3日目に再び下血し緊急内視鏡検査を施行した.潰瘍底より無数の湧出性出血を認め内視鏡的止血が無効であったため,注腸透視用直腸カテーテル(Yチューブ)を挿入し,透視下にクリップを目安にバルーンによる圧迫を行った.90分の圧迫で止血が得られ,以後もワルファリンは継続しPT INR 1.6を超えるまでヘパリンをAPTT 50秒程度になるよう減量し併用した.排ガス排便により再出血をきたした際にその都度カテーテルによる圧迫を行い,治療7日後,ヘパリン投与終了2日後より出血は見られなくなった.Hbは7.2g/dlまで減少し,ヘパリン中止後血小板は10万/μlを越えた.
【考察】本例は肝硬変症とワルファリン治療に加え,ヘパリンによる血小板減少が治療後出血を遷延させたものと考えた.内視鏡的止血無効の直腸出血に対して,潰瘍底へのバルーンによる直接圧迫が一次止血を促進し,有効な止血をもたらしたものと考え報告する.
索引用語 抗凝固療法, ESD