セッション情報 |
一般演題
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タイトル |
59:内視鏡的治療にて軽快し得た主膵管損傷を伴う膵頭部外傷の一例
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演者 |
安部 高志(大分県厚生連鶴見病院 消化器科) |
共同演者 |
永井 敬之(大分県厚生連鶴見病院 消化器科), 相馬 渉(大分県厚生連鶴見病院 消化器科), 綿田 雅秀(大分県厚生連鶴見病院 消化器科), 阿南 重郎(大分県厚生連鶴見病院 消化器科), 大河原 均(大分県厚生連鶴見病院 消化器科) |
抄録 |
【はじめに】これまで主膵管損傷を有する膵外傷は手術適応とされてきたが,その術式の侵襲の大きさから内視鏡的治療を選択し治療し得た報告も認めるようになった.今回我々は主膵管損傷を伴う膵頭部外傷に対し,内視鏡的膵管ドレナージ術を施行し,治療し得た一例を経験したので報告する.【症例】43歳の男性.建設業に従事.建設現場にて,立て掛けていた鉄骨が腹部に倒れてきて受傷.約12時間後に腹痛を主訴に当院外来受診.腹部造影CTにて内部の造影効果の乏しい膵頭部の腫大,周囲には少量のfluid collectionを認め,AMY 795 IU/l(P-AMY 77.4 %), WBC 10800 /μl, CRP 0.34 mg/dl,と高値を認めることから,膵頭部外傷と診断した.内視鏡的膵管造影術(以後ERP)を施行すると,膵頭部に一致して主膵管からの造影剤の漏出を認め,主膵管損傷を伴う膵頭部外傷と診断した.ERPにて,造影剤が膵実質内に留まり,また損傷部位を越えて尾側へガイドワイヤーが通過できたことにより主膵管の完全断裂は認めなかった.内視鏡的膵管ドレナージ術を施行し,絶食,抗生剤,膵酵素阻害剤の点滴静注にて加療を行った,病日16日目には炎症反応は陰性化し,腹部症状の消失を得た.腹部造影CT上は造影効果は以前乏しいが膵頭部腫大は軽快を認めた.膵仮性嚢胞の存在も認めたが以後増大傾向は示さなかった.病日19日目より経口摂取再開.炎症反応は陰性を維持し,病日35日目退院.受傷後3ヶ月目膵仮性嚢胞はほぼ消失し,ERP上造影剤の漏出は消失しており,受傷部位の主膵管狭窄を認めたが,尾側膵管の拡張は認めなかったことより,膵管ドレナージチューブを抜去.現在受傷後1年2ヶ月まで外来にて経過観察し得ているが,腹部症状の再燃は認めず,従来の建設業に従事している.【考察】主膵管損傷を伴う膵外傷は,従来手術適応とされてきたが,膵頭十二指腸切除術,膵空腸吻合術(Letton-Wilson法)など選択される術式の侵襲の大きさから,最近は内視鏡的膵管ドレナージ術などによる内視鏡的治療の報告を認めるようになった.膵外傷における死亡率は9~21%と高率でもあり,その適応,治療には慎重を要すると思われる. |
索引用語 |
主膵管損傷を伴う膵頭部外傷, 内視鏡的治療 |