セッション情報 シンポジウム3

タイトル 研-10:

最大径13mmの進行横行結腸癌の1例

演者 谷口 秀和(済生会熊本病院 消化器病センター)
共同演者 江口 洋之(済生会熊本病院 消化器病センター), 工藤 康一(済生会熊本病院 消化器病センター), 上原 正義(済生会熊本病院 消化器病センター), 吉田 健一(済生会熊本病院 消化器病センター), 藤本 貴久(済生会熊本病院 消化器病センター), 多田 修治(済生会熊本病院 消化器病センター), 須古 博信(済生会熊本病院 消化器病センター), 田中 秀幸(済生会熊本病院 外科), 神尾 多喜浩(済生会熊本病院 病理), 金光 徹二(かねみつ胃腸科外科医院)
抄録 症例は63歳、女性。虫垂炎に対して虫垂切除術の既往あり。家族歴、嗜好歴に特記すべきことなし。自覚症状はなかったものの、平成18年10月検診にて便潜血陽性を指摘されたため、同年10月前医にて大腸内視鏡検査を受けたところ、横行結腸に径10mm大の隆起性病変が認められた。生検にてGroup5 well differentiated adenocarcinomaの診断であったため、同年当院紹介となった。大腸内視鏡検査を施行したところ、横行結腸中央部に小指頭大の隆起性病変を認めた。病変の中央には不整形の浅い陥凹が認められ、びらんや潰瘍はないものの陥凹の表面は比較的粗ぞうで、IIa+IIc様の形態を呈していた。空気を抜くと腫瘍周囲の正常粘膜が下から押し上げられている所見が認められ、粘膜下層への浸潤が示唆された。さらに注腸X線検査を施行したところ、大きさは径13×12mm大であったが、強さを変えて圧迫しても腫瘍自体はまったく変形をきたさず、圧迫像では明瞭な欠損像として描出された。以上より、粘膜下層への多量浸潤を来たしたsm massive癌を強く疑い、同年11月、腹腔鏡補助下横行結腸切除術(D2郭清)を施行した。切除標本では、腫瘍は大きさのわりに硬く、進行癌の可能性も示唆され、T vent、AW(-)、OW(-)、EW(-)、IIa+IIc様、MP、N0、H0、P0、M(-)、Stage Iの所見であった。組織学的には高分化型腺癌が粘膜下層へ塊状に増殖しており、一部は固有筋層表層へと浸潤し、Moderately differentiated adenocarcinoma、mp、aw(-)、ow(-)、ew(-)、ly0、v0、n0で、大きさ13×12mmの進行横行結腸癌であった。術後経過は良好で、現在まで再発は認めていない。本症例は、最大径13mmと小さいにもかかわらず、固有筋層への浸潤を認めた進行癌であった。過去9年間に当院にて手術を行った大腸癌症例のうち、径15mm以下の進行癌は1.6%のみと比較的稀であり、本症例のように大きさのわりに垂直方向への発育が顕著な進行大腸癌は臨床的にも注意が必要と思われるため、文献的考察を加えて報告する。
索引用語 進行大腸癌, 表面型大腸癌