セッション情報 |
一般演題
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タイトル |
222:肝多血性良性結節と肝細胞癌が同時に観察された一例
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演者 |
山下 信行(九州厚生年金病院 内科) |
共同演者 |
長野 政則(九州厚生年金病院 内科), 中野 龍治(九州厚生年金病院 内科) |
抄録 |
症例は初診時40歳代後半女性.飲食店を経営し,過去多量に飲酒しており,3年前にアルコール性肝障害と診断された.初診の2年前,他院で肝腫瘍を指摘されたが,生検で良性と診断された.今回腹水の治療のため当院に入院となった.入院時の検査で,肝両葉に5個の結節を認めた.以前より増加・増大しており,腫瘍マーカーは陰性であったが,肝細胞癌が疑われた.この時は肝機能不良のため経過観察としたが,1ヶ月後に脳出血で入院した.肝結節の変化はなかったものの,症状改善後に肝前区域の径2cmの動脈多血性結節に対して生検を行った.組織像では悪性所見を認めず,再度経過観察とした.しかし退院約1年後に肝後区域の結節が径4cmに増大しており,生検を行ったところ,中分化肝細胞癌と診断された.肝機能不良のため選択的に経カテーテル的肝動脈塞栓術で治療を行った.その後,再発のため数回治療を行ったが,肝癌の治療開始より4年以上経過した時点で生存している.数個みられた結節は,消失するか,または以前に比べて不明瞭となっている.アルコール摂取および肝硬変は肝細胞癌の危険因子であり,慢性アルコール性肝障害症例に肝結節性病変がみられた時は,肝細胞癌を鑑別しなければならない.しかし,肝細胞癌と同じく動脈多血性を呈するものとして,過形成性結節も多くみられ,しばしば鑑別に苦慮することが報告されている.本例の肝前区域の結節は,生検結果などから過形成性結節と考えられた.同時に数個みられた結節の一つが肝細胞癌であったが,増大するまで診断することができず,早期診断の機会を失ってしまった.アルコール性肝障害症例で結節が複数存在した場合には,本症例のように良性結節と肝細胞癌が同時にみられることもあり,慎重に診断を行う必要があると考えられた. |
索引用語 |
アルコール性肝障害, 過形成結節 |