セッション情報 一般演題

タイトル 1:

胃原発性絨毛癌の1例

演者 平野 誠太郎(高田中央病院 外科)
共同演者 有永 信哉(高田中央病院 外科), 瀧上 茂(高田中央病院 内科)
抄録 今回我々は極めて稀な胃原発性絨毛癌の1例を経験したので、文献的考察を加え報告する。症例は73歳、男性。2003年11月26日、全身倦怠感を訴え当院内科受診。腹部CT検査にて肝門部および腹部大動脈周囲に腫瘤を認め、膵癌や悪性リンパ腫などが疑われたため、12月8日、当科紹介入院となる。血液検査所見では腫瘍マーカーのCEA値が195.6ng/ml、AFP値が443.8ng/mlと上昇していた。肝門部から膵頭部にかけて腫瘤を認め、大動脈周囲や肝にも腫瘤があり、悪性リンパ腫や、悪性腫瘍のリンパ節転移肝転移が疑われた。また胃内に造影効果のある絨毛状隆起性病変を認め、胃悪性腫瘍の存在も疑われた。上部消化管造影では、体部から前庭部全体を占めるゴツゴツとした隆起性病変を認めた。胃内視鏡検査にて胃体部小弯を中心とした隆起性病変を認め、生検にて胃絨毛癌と診断した。腫瘍マーカーHCGサブユニットも93.6ng/mlと上昇していた。肝転移、リンパ節転移を伴う胃原発性絨毛癌と診断し、治療は化学療法を選択した。TSー1およびタキソテールによる化学療法にて、胃の壁肥厚は改善し、肝門部や大動脈周囲のリンパ節も縮小、肝S7転移巣は形態変化を示し効果ありと判断しタキソテールによる化学療法を継続したが、徐々に腫瘍マーカーが上昇し、左鎖骨上窩リンパ節転移も出現してきたためタキソールへ変更した。しかし、癌の進行を抑えることができず、2004年6月25日、死亡退院となった。原発性胃絨毛癌の発生起源としては、様々な説が論じられているが本邦報告例では、腺癌の共存が74%に認められ、また、腺癌と絨毛癌の移行例があることから、逆分化説が多くの文献で支持されている。婦人科領域での絨毛癌ではメソトレキセート、アクチノマイシンDなどが第一選択とされている。胃原発性絨毛癌は、逆分化説から胃腺癌に有効な化学療法を選択すべきとの報告もあり、5-FU、CDDP、CPT-11、ドセタキセルなどが使用されており、その効果が示されている。しかし、予後は極めて不良であり、今後の検討が期待される。
索引用語 胃原発性絨毛癌, 化学療法