セッション情報 パネルディスカッション6(消化吸収学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会合同)

消化吸収の側面からみた炎症性腸疾患の病態と栄養療法

タイトル 消PD6-5:

ヒト大腸粘膜上皮細胞層のバリア機能およびclaudin蛋白発現量に影響するアミノ酸の同定

演者 勝野 達郎(千葉大・消化器内科)
共同演者 高橋 良枝(千葉大・消化器内科), 横須賀 收(千葉大・消化器内科)
抄録 【目的】我々はレミケード(IFX)導入クローン病症例に対し、1日最低600kcalの経腸栄養剤併用により、IFXの二次無効率が有意に減少することを報告したが、機序は明らかではない。本研究ではアミノ酸がヒト大腸粘膜上皮細胞層のバリア機能および claudin蛋白発現量に与える影響を検討した。なお、上皮細胞層におけるclaudin-2の発現増加はバリア機能を低下させる。【方法】Confluent後1週間経過したT84ヒト大腸粘膜上皮細胞層を対象とした。バリア機能は、transepithelial electrical resistance(TER)によって評価した。蛋白量はWestern blottingにより評価した。【成績】まず、24時間無血清化した上皮細胞層を 10 ng/mlのサイトカインで48時間incubateした。炎症性サイトカイン(IL-6、IL-12、TNF-α、IFN-γ)の添加により、TERは control(100%)と比較して著明に低下した(それぞれ87±0.6%、66±8.3%、51±1.3%、53±3.9%)。一方、IL-10添加によりTERは増加した(124±5.6%)。炎症性サイトカイン添加により、選択的にclaudin-2蛋白量が増加したが、IL-10添加では不変だった。次に、サイトカイン無添加群、IL-6添加群、IL-10添加群の粘膜上皮細胞に対して、20種類のアミノ酸(pH=7.4、2mM)を個々に添加しTERの変化を観察した。その結果、グリシンおよびグルタミン添加時にのみTER値が有意に増加することが明らかになった(無添加群でそれぞれ118±0.1%, 116±2.6%、IL-6添加群で100±1.8%, 97±2.1%、IL-10添加群で150±10%, 140±7.5%)。また、グリシンおよびグルタミン添加によりいずれの群においても選択的にclaudin-2蛋白量が有意に抑制された。【結論】大腸粘膜上皮細胞層において、炎症性サイトカインはclaudin-2蛋白を選択的にup-regulateし TERを抑制しバリア機能を低下させるが、グリシンおよびグルタミンは、逆にclaudin-2蛋白を選択的にdown-regulateしTERを上昇させバリア機能保持に働くことが明らかになった。生物学的製剤使用時の栄養療法の有効性の一つが示された。
索引用語 アミノ酸, バリア機能