セッション情報 一般演題

タイトル 207:

HELLP症候群の一例

演者 堀川 ゆき(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科学)
共同演者 吉富 智幸(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科学), 田尻  博敬(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科学), 山下 尚毅(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科学), 上田 哲弘(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科学), 加藤 正樹(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科学), 古藤 和浩(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科学), 遠城寺 宗近(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科学), 穴見 愛(九州大学病院 周産母子センター)
抄録 HELLP症候群は妊産褥婦が溶血・肝酵素上昇・血小板減少を来す疾患で、発症頻度は正常妊娠の約0.2%程度である。HELLP症候群の本態は肝動脈攣縮と微細血管障害性溶血性貧血であり、これらは血管内皮細胞障害とそれに引き続き遊離される血管作働物質の異常放出によって生じる血管攣縮が原因と考えられている。近年、この一連のカスケードをもたらす物質の除去、凝固・線溶因子の是正目的で血漿交換の有用性が報告されている。今回我々は急速な経過をたどり、血漿交換が著効したHELLP症候群の一例を経験した。
症例は29歳女性。妊婦検診では妊娠中毒症を指摘された事はなかった。妊娠39週に突然の心窩部痛が受診した為前医を受診。高血圧と胎児持続徐脈を認めたため妊娠高血圧症候群、胎児ジストレスの診断で当院周産母子センターを受診した。受診時意識はJCS-1、血圧159/90mmHg、全身浮腫、心窩部痛、肉眼的血尿を認め、血液生化学データはTB1.2mg/dl、AST/ALT 530/386U/L、LDH1347U/L、WBC13710/μl、Hb11.2g/dl、Plt10.5万/μl、PT109%と肝機能障害と血小板低下を認めた。緊急帝王切開術を施行したが術中術後に著名な出血傾向を認め、術後はTB5.9mg/dl、AST/ALT 1576/679U/L、LDH4100U/L、WBC9990/μl、Hb9.8g/dl、Plt5.5万/μl、PT50%、FDP32.2μg.mlと肝機能障害の増悪、DIC、溶血所見を認めた。腹部CTでは肝腫大、腹水、門脈域・胆嚢壁の浮腫性変化を認めた。各種ウイルスマーカーは陰性でHELLP症候群と診断、当科に転科し血漿交換療法、DIC治療、ハプトグロビン投与を行った。第2病日にはPlt5.3万/μl、PT74%と改善傾向となり、その後も経過は順調で第11病日に退院した。HELLP症候群は突然発症し急速な経過をたどり母児の予後に重大な影響を及ぼす為、早期診断・急速遂娩はもちろんであるが、血漿交換を含めた内科的治療も積極的に行う必要があると考えられた。
索引用語 肝機能障害, 循環障害