セッション情報 シンポジウム3

タイトル 研-16:

アザチオプリンによる胆管破壊型の薬物性肝障害の1例

演者 轟木 渉(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院)
共同演者 具嶋 敏文(同 肝臓科), 上野 新子(同 肝臓科), 高崎 智子(同 健康医学センター), 相島 慎一(同 病理), 高橋 和弘(同 肝臓科)
抄録 【症例】 54歳男性 【主訴】 肝機能障害 【家族歴】 母親:糖尿病 【生活歴】 飲酒なし
【現病歴】 2002年から慢性炎症性脱髄性ポリニューロパチー、糖尿病の診断でプレドニゾロン、インスリン、アザチオプリン等で外来加療中であった。2007年1月腹痛、肝機能異常を認めたため入院となった。
【入院時現症】 意識清明、眼球結膜黄疸なし、胸腹部異常なし、肝脾触知せず、深部腱反射軽度低下、四肢遠位筋優位の筋萎縮、筋力低下、手袋靴下型の感覚低下を認めた。
【入院時検査成績】 AST 208IU/l、ALT 295IU/l、LDH 574IU/l、ALP 2652IU/l、γ-GTP 2036IU/lと胆道系優位の肝機能異常を認めた。CRPは 1.2mg/dと軽度の上昇を認めた。HBs抗原、HCV抗体はともに陰性であった。抗核抗体は陰性、抗ミトコンドリア抗体も陰性であった。CA19-9 796U/ml、DUPAN-2 1500U/ml と上昇していた。腹部超音波検査、腹部造影CTで肝胆膵に特記する所見を認めなかった。また、MRCP、ERCP施行するも明らかな病変を認めなかった。肝生検組織では門脈域の炎症細胞浸潤を認め小葉間胆管上皮の核の大小不同、細胆管反応を認めた。肝細胞の壊死はわずかであり、胆管炎の所見であった。
【入院後経過】 2006年11月までは肝障害を認めなかったこと、2006年10月からアザチオプリン内服を開始したこと、DDW-J2004薬物性肝障害ワークショップのスコアリングで5点とアザチオプリンによる肝障害を疑い、同薬剤を中止としたところ、速やかに肝胆道系酵素は改善し、腫瘍マーカーも低下した。 以上よりアザチオプリンによる胆管破壊型の薬物性肝障害と診断した。
【考察】 胆汁うっ滞型の薬物性肝障害はしばしば経験するが、胆管破壊型肝障害は比較的まれである。また、アザチオプリンによる肝機能障害も類洞の拡張、中心静脈閉塞症などの血管障害型が知られているが、胆管破壊型肝障害の報告は少ない。胆管破壊型肝障害について文献的考察を含めて報告する。
索引用語 薬剤性肝障害, 胆管破壊型肝障害