セッション情報 一般演題

タイトル 85:

空腸狭窄による小腸イレウスを契機に診断されたクローン病の一例

演者 荻野 治栄(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科)
共同演者 村尾 寛之(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科), 多喜 研太郎(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科), 樋口 奈緒美(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科), 金山 兼司(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科), 水谷 孝弘(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科), 隅田 頼信(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科), 板場 壮一(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科), 秋穂 裕唯(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科), 中村 和彦(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科), 高柳 涼一(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科), 神代 由美子(九州大学大学院医学研究院 形態機能病理), 後藤 綾子(九州大学大学院医学研究院 形態機能病理), 八尾 隆史(九州大学大学院医学研究院 形態機能病理), 田辺 嘉高(九州大学大学院医学研究院 臨床・腫瘍外科), 壬生 隆一(九州大学大学院医学研究院 臨床・腫瘍外科)
抄録 症例は42歳,男性。平成16年より時折、腹満感を自覚していた。その後、便秘を繰り返し近医にて過敏性腸症候群の診断を受けていた。平成18年2月に食欲不振、腹痛、嘔気が出現し近医受診。小腸イレウスの診断にて緊急入院となった。腹部CT、下部消化管内視鏡検査、小腸X線検査施行され小腸狭窄、盲腸潰瘍瘢痕を認めた。保存的治療にて軽快したため外来で経過となっていたが、5月になって症状が増悪したため精査加療目的にて当院紹介入院。ダブルバルーン内視鏡検査にて空腸に狭窄を認め、縦走潰瘍瘢痕、多発潰瘍を伴っていた。生検では特異的な所見は認めなかったが、内視鏡所見や小腸X線検査にて狭窄部に7cmに渡る偏側性変形を認めたことからクローン病を疑い、5-ASA製剤にて治療を開始した。その後、症状軽快したため外来で経過観察していたが、12月10日に再度小腸イレウスとなり緊急入院。保存的加療にて軽快したが、狭窄が強く患者様の手術希望もあったため平成19年1月15日手術となった。術中所見ではトライツ靱帯より約160cm肛門側に2カ所輪状潰瘍に伴う狭窄を認め、腸管膜付着側には縦走潰瘍を認めた。術中内視鏡検査にて回腸に小びらんを認める以外粗大病変がないことを確認し、狭窄部を含めた小腸切除を施行した。標本にて腸管膜付着側に縦走潰瘍を認め、組織学的に非乾酪性肉芽腫を認めたことからクローン病と診断した。術後経過は良好で現在5-ASA製剤にて外来経過観察中である。クローン病は全消化管をおかす疾患であるが、粗大病変が認められる部位を罹患部位と定義すると、空腸に病変が限局しているのは0.6%と比較的まれである。本症例は空腸に限局する狭窄を認め、回腸末端に病変がなく、盲腸に潰瘍瘢痕を認めたことより結核との鑑別が問題であった。最終的に画像所見からクローン病を疑い手術となった。空腸狭窄による小腸イレウスが契機になって診断されたクローン病はまれであり、貴重な症例と考えられたため、若干の文献的考察を加え報告する。
索引用語 クローン病, 空腸狭窄