セッション情報 |
シンポジウム3
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タイトル |
研-21:劇的な経過をみた重症出血性大腸炎の1剖検例
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演者 |
丸山 誠代(千鳥橋病院 総合内科) |
共同演者 |
尾崎 美香(千鳥橋病院 総合内科), 濱地 千枝(千鳥橋病院 内科), 有馬 泰治(千鳥橋病院 総合内科), 鮫島 博人(千鳥橋病院 内科) |
抄録 |
症例は58歳女性。気管支喘息、便秘およびてんかんで通院加療中であった。2006年5月頃より吐気、食欲低下、8月頃からは7-10行/日の水様下痢と37℃台の発熱を認め、この間20kgの体重減少あり。感染性胃腸炎の疑いで8月15日当科入院。入院時、腹部に軽度の圧痛と肛門部に可動性のある2cm大のポリープを認めた。8月21日の腹部造影CTでは、直腸壁に浮腫状肥厚を認めた。8月24日のTCFでは歯状線近くの直腸に不整形の多発潰瘍を認め、それより口側に明らかな異常を認めず、直腸粘膜脱症候群を疑った。補液と整腸剤のみで症状は一旦改善し、8月28日のSCF所見では直腸潰瘍も改善。9月2日に痙攣発作を認め、中止していた抗痙攣薬を再開。9月5日頃より意識障害と発熱、下痢を認めるようになり、7日のCTで著明に拡張した大腸と左側結腸優位の腸管壁の浮腫状肥厚および周囲の脂肪織の濃度上昇を認め、腸間膜脂肪織炎や中毒性巨大結腸症を考えた。8日にはショック状態となり集中治療を開始するとともに、ステロイドパルス治療および腸管減圧目的で横行結腸ストーマ造設術を行った。術中所見では、DICに伴う腸管の易出血性と浮腫を認めるが虚血や脂肪織炎は認めなかった。術後はストーマからの断続的な血性下痢を認めたが、炎症所見の改善をみながらステロイドを漸減。9月16日頃より再び発熱と持続する血性下痢を認め、19日のSCFでは全周性に出血壊死を思わせる脆弱な粘膜を認めた。重症潰瘍性大腸炎や感染性腸炎を考え、集学的治療に加え、ステロイド療法および抗ウィルス薬・抗菌薬の投与を行った。25日のストーマからのCFでは、口側腸管は発赤浮腫状であるが黄色水様便を認め、肛門側では一部血管透見像もあり、発赤や浮腫の改善を認めていた。しかしながら、次第に全身状態の悪化を認め10月1日に死亡された。結腸の部分剖検病理所見では、潰瘍性大腸炎が最も疑われたが、短期間の劇的な臨床経過および経過中の非典型的な大腸内視鏡所見など示唆に富む症例と考えられ、若干の考察を加えて報告する。 |
索引用語 |
潰瘍性大腸炎, 下部消化管内視鏡検査 |