セッション情報 一般演題

タイトル 138:

出血性胃潰瘍の経過中に発症した門脈ガス血症の一例

演者 松本 康(唐津赤十字病院 内科)
共同演者 野田 隆博(唐津赤十字病院 内科), 山岡 宏太郎(唐津赤十字病院 内科), 湯ノ谷 誠二(唐津赤十字病院 外科)
抄録 門脈ガス血症は腸管壊死など重篤な疾患が原因であることがしばしばで、慎重な治療方針の決定が要求される。今回出血性胃潰瘍の経過中に門脈ガス血症を生じた一例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。【症例】症例は53歳男性、喫煙者であったが生活習慣病や狭心症の既往なし。平成18年12月12日夜、ふらつきを自覚し、その後よりコーヒー残渣様の嘔吐およびタール便出現し、当院に救急搬送。意識は清明、血圧90/62mmHg、脈拍110/分の軽度ショック状態であった。Hb 11.0g/dlと貧血を認め、上部消化管出血を疑い緊急上部消化管内視鏡検査予定であったが、急激に腹痛出現。腹部に圧痛や腹膜刺激徴候なし。腹部エコーでは肝に斑状エコー散在したが上腸間膜動脈起始部の血流は維持されていた。腹部造影CTでは胃拡張および内容物貯留があり、門脈本幹・上腸間膜静脈内・回盲部の静脈内に空気像を認めた。一方上腸間膜動脈の造影不良や腸管壁の造影不良を認めなかった。経鼻胃管挿入したところ暗赤色の内容物が吸引され、腹痛は消失した。その後腹痛の出現なく、また代謝性アシドーシスやCK・LDHの上昇等腸管虚血を示唆する所見が乏しいため、腸管減圧継続とPPI投与で経過観察する方針とした。また当日は腸管内圧上昇を避けるために上部消化管内視鏡は施行しなかった。14日腹部CTでは門脈ガスの消失を認め、15日上部消化管内視鏡を施行。体上部後壁に多発潰瘍を認めた。凝固能異常や心腔内血栓、深部静脈血栓を認めず、また腹部CT angiographyでは明らかな動脈狭窄等は認めなかった。25日全大腸内視鏡では盲腸憩室を認めたが明らかな虚血性変化を疑う所見を認めなかった。経過良好で27日退院。その後外来で腹痛の出現はなかった。【考察】門脈ガス血症は腸管内圧上昇が原因の一つとされ、本症例は胃潰瘍とそれに伴う大量出血による内圧上昇が原因と考えられた。一方、腸管虚血は否定的であった。また回盲部の静脈内にも空気像を認めたことより内圧上昇の局在と門脈ガスの局在は必ずしも合致しない可能性も示唆された。
索引用語 門脈ガス, 胃潰瘍