セッション情報 |
一般演題
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タイトル |
201:腹痛を伴い発症した原発性硬化性胆管炎に合併した広範囲門脈血栓症の一例
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演者 |
所 征範(大分大学 医学部 生体分子構造機能制御講座) |
共同演者 |
井上 恵(大分大学 医学部 生体分子構造機能制御講座), 高橋 祐幸(大分大学 医学部 生体分子構造機能制御講座), 織部 淳哉(大分大学 医学部 生体分子構造機能制御講座), 姫野 克郎(大分大学 医学部 生体分子構造機能制御講座), 清家 正隆(大分大学 医学部 生体分子構造機能制御講座), 吉松 博信(大分大学 医学部 生体分子構造機能制御講座) |
抄録 |
症例は37歳女性。24歳時に初めて肝機能障害と血小板低値を指摘され近医を受診した。腹腔鏡下肝生検を施行されたところ、すでに肝硬変の状態であり原因として自己免疫性肝炎が疑われPSL療法が開始された。その後27歳と28歳時に食道静脈瘤破裂を発症、EVL・EISにて加療された。29歳時には血小板減少・門脈圧亢進症に対して脾臓摘出術が施行され、その後もPSL5~10mg/日の内服にてコントロールされていた。33歳時に転居を契機に当科を受診、経過中の血液検査で時折トランスアミナーゼの上昇を認め、精査加療目的で平成18年8月当科入院。腹部CTにて肝両葉の肝内胆管の拡張と著明な肝の変形を認め、ERC施行したところ総胆管~肝内胆管の不均一な狭窄と拡張が確認され原発性硬化性胆管炎と診断された。黄疸の進行や自覚症状もなくUDCA内服で経過をみられていたが、平成19年3月はじめより微熱と上気道炎症状、食欲不振が出現し続いて右上腹部を中心とした持続的な痛みを自覚、徐々に増強したため3/10当科を緊急受診した。腹部CTにて以前のCTでは認められなかった門脈本幹~肝内門脈枝に及ぶ血栓と、それと連続するように上腸間膜静脈などにも広範囲に血栓の存在が確認され、腸管はうっ血をきたし腸管壁の浮腫を認めた。動脈血流は保たれていた。広範囲門脈血栓による腸管血行障害と診断し、入院後直ちに充分な補液と抗凝固療法を開始した。腹痛は徐々に改善し、経過観察のCTでは血栓の状態に変化はないものの腸管の浮腫は消失していた。本症例の門脈血栓発症の原因は明らかではないが、以前から存在した門脈圧亢進症に脱水などが加わり血栓形成が進行し、腸管静脈系の血流障害に至ったのではないかと考えられた。当科では2005年から今までに9例の門脈血栓症例を経験している。肝硬変患者診療にあたっては門脈血栓発症の危険性を常に念頭におく必要があると考えられた。 |
索引用語 |
門脈血栓症, 肝硬変 |